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売上げに係る対価の返還等を行う場合のインボイス交付の要否

インボイス発行事業者が課税事業者に対して、商品の返品や値引き、割戻しなどの売上げに係る対価の返還等(以下「返還等」)を行った場合、返還インボイスの交付義務があります。記載事項は主に5つで、次に示した通りです。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 返還等を行う年月日及びその基となった課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④ 返還等の税抜価額又は税込み価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率
一方、先週の税務ニュースにて”3万円未満の公共交通機関による旅客の運送”について、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるとお伝えしましたが、返還インボイスの交付義務についても免除の対象とされます。
また、売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合も返還インボイスは不要です。売手負担の銀行手数料を売上値引きで処理している場合についても同様で、振込手数料は一般的には1万円未満と考えられるために、売手の返還インボイスの交付義務は免除されます。

インボイス制度におけるタクシー代の取扱い

インボイス制度の要件の一つに、”3万円未満の公共交通機関による旅客の運送”は一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる要件がありますが、当該要件はバス・鉄道・船舶に限られ、タクシー代については対象外となります。
タクシー代は、原則として、登録番号や税率ごとに区分した消費税額等が記載された適格請求書の交付を受けなければ、仕入税額控除が認められません。
例外として、以下の場合は適格請求書なしで一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
① 基準期間の課税売上高が1億円未満の事業者による税込1万円未満の取引(2023年10月1日の制度開始から6年間)
② 出張時に利用したタクシー代について、旅費規定等に基づき従業員へ精算する場合

グローバル・ミニマム課税に係る改正省令が交付

グローバル・ミニマム課税への対応に係る法人税法施行規則の一部を改正する省令などが、6月30日に公布されました。

改正政令は6月16日に公布されていましたが、改正省令では「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」等について、特定多国籍企業グループ等の判定等における基準とすべき金額の本邦通貨表示の金額への換算方法の細目や、国際最低課税額確定申告書の記載事項及び添付書類等の細目などが規定されています。

スキャナ保存に関する見直し

令和5年度の税制改正によりスキャナ保存に関する内容が改正されました。

A 解像度・階調・大きさに関する情報の保存は不要
国税関係書類をスキャナで読み取った際の解像度・階調・大きさに関する情報の保存が不要となりました。しかしスキャナで読み取る際の解像度(200dpi 以上)や階調(原則としてカラー画像)などの要件自体に変更はありません。

B 入力者等情報の確認要件は不要
スキャナ保存時に誰が読み取り作業を行ったか、という情報の確認要件が廃⽌されました(電子取引データ保存についても同様)。

C 帳簿との相互関連性の確保が必要な書類を重要書類に限定
スキャナで読み取った際に、帳簿と紐づける必要のある国税関係書類が、「重要書類(契約書・領収書・送り状・納品書等のように、資金や物の流れに直結・連動する書類)」に限定されることとなりました。

これらの改正は令和6年1月1日以後にスキャナ保存が⾏われる国税関係書類について適用されることとなります。

従業員が立替経費の領収書を電子データで受領した場合

電子帳簿保存法における電子取引について、従業員が立替経費の支払先から電子データで領収書を受領した場合も、会社にとっての電子取引に該当します。
法人税法上、会社業務として従業員が立て替えた費用は、会社の費用として計上されるべきなので、電子データを受領するのが従業員であっても、会社と支払先との電子取引に該当すると考えられます。
従って、取引があった際は従業員から電子データを集約し、会社として保存し、管理する必要がありますが、精算日までに期間があいてしまうなどの状況下では、従業員のパソコンやスマートフォン等に電子データ自体を保存しておきつつ、会社としても従業員が保存している情報を管理しておくことも認められます。
なお、この場合でも税務当局から提出の要請があった場合に速やかに出力できる状態にしておく必要があることをご留意ください。

電子取引データ保存に関する見直し

令和5年度の税制改正により電子取引データの保存に関する内容が改正されました。
主な改正内容として、税務調査等の際に電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合で、以下のいずれかの場合は検索要件が不要となります。
A  基準期間の売上高が5,000万円以下の場合
B  出力書面を取引年月日その他の日付及び取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている場合
また、以下の要件を満たす場合には、電子取引データを単に保存しておくことが認められます。
イ  保存時に満たすべき要件に従って電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請不要)
ロ  税務調査等の際に、電子取引データのダウンロードの求め及びその電子取引データの出力書面の提示・提出の求めに応じることができるようにしている場合

免税事業者からの課税仕入のうち消費税とみなされない部分の取り扱い

令和5年10月1日のインボイス制度導入後、インボイス発行事業者以外の者から課税仕入を行った場合には、課税仕入に係る消費税額相当額の80%のみが仕入税額控除の対象となり、20%は対象外となります。この20%部分の取り扱いですが、これは消費税額等ではないため、その金額を取引の対価の額に含めて、法人税等の課税所得金額の計算をする必要があります。(例えば固定資産等の取得なら取得価額に算入することが必要です。)
消費税の95%ルールにおける「控除対象外消費税額等」と混同し、その事業年度等の損金の額に算入できると誤解しているケースが多いようですので、注意が必要です。

信託型SO(ストックオプション)は給与課税に相当

国税庁は、信託型と呼ばれるSO(株式購入権)の税務上の取り扱いについて、権利行使時に得た経済的利益は給与としての税務処理が必要である旨の発表をしました。理由としては、実質的に会社がSOを付与しており、付与対象者が実質的な金銭負担をしておらず、また労務の対価としての側面が強いなどが挙げられております。
従来、信託型SOはスタートアップ企業を中心に、給与課税されないという認識で導入が進んでいましたが、今回の発表を受けて、既に権利行使済みの場合は、発行会社が未納付の源泉所得税を納付する必要があります。

非居住者の所有する不動産を賃借する場合の源泉徴収

国内法人Aが、非居住者B氏の所有する日本国内の不動産を事務所や倉庫として賃借する場合、B氏に支払う家賃は源泉徴収の対象となります。(「国内にある不動産の貸付けによる対価」は国内源泉所得に該当します。)
源泉徴収すべき税率は、国内法で20.42%となりますので、徴収漏れのないよう注意すべき事案です。
国内の不動産から生じる収入は、すべての租税条約において不動産の所在地国で課税できることになっており、軽減税率もないことから、課税は国内法によることとなります。

デジタル課税 -第2の柱(グローバル・ミニマム課税)その2

デジタル課税の第2の柱(グローバル・ミニマム課税)の導入に伴い、外国子会社合算税制(CFC税制)の見直しがされています。
CFC税制は経済実態のない子会社を利用した租税回避行為に対処することを目的としているのに対して、第2の柱は各国共通の最低税率を導入することにより法人税の引き下げ競争に歯止めをかけることを目的としていますので、両者は異なる仕組みと言えます。
CFC税制の見直しとして、①特定外国関係会社(ペーパーカンパニー)の適用免除要件である租税負担割合を30%⇒27%への変更及び②書類添付義務の緩和がなされています。