ブログ

高速道路のETCクレジットカードで精算を行った場合の仕入税額控除について

ETCクレジットカード利用明細書は、課税資産譲渡等の内容や適用税率などを記載していないことから、一般的に適格請求書には該当しません。

高速道路の利用についてETCクレジットカードで精算を行った場合、支払った料金に係る仕入税額控除の適用を受けるには、原則、通行料金確定後、ETC利用照会サービスから適格簡易請求書の記載事項に係る電磁的記録「利用証明書」をダウンロードし、保存する必要があります。
一方、高速道路の利用頻度が高く、すべての利用証明書の保存が困難な場合は、クレジットカード利用明細書と高速道路会社ごとの任意の取引に係る利用明細書を併せて保存することで、仕入税額控除を行うことができます。

インボイス制度における短期前払費用の取扱い

適格請求書発行事業者から短期前払費用として課税仕入れを計上した場合、支出した課税期間において仕入税額控除を適用できますが、仕入税額控除の適用を受けるためには、原則、適格請求書の保存が必要となります。
支出した課税期間に適格請求書の交付を受けられなかった場合は、事後に交付される適格請求書を受け取り保存すれば仕入税額控除の適用を受けることができます。
例えば12月決算法人が当期をまたぐ1年間の保守料を前期中に適格請求書発行事業者へ一括で支払い、前期に短期前払費用として課税仕入を計上した場合に、前期中に適格請求書を受領できなかったとしても、事後に受領できれば問題ありません。

また、契約変更等により仕入税額控除の適用を受けた金額が変動した場合は、差額(確定した対価の額に基づく課税仕入れに係る消費税額-契約変更等前の課税仕入れに係る消費税額)を、その確定した日の属する課税期間における課税仕入れに係る消費税額に加算又は減算します。
例えば12月決算法人が当期をまたぐ1年間の保守料を前期中に適格請求書発行事業者へ一括で支払った場合で、当期に契約変更が生じたときは、当期の課税仕入れに係る消費税額に加算又は減算します。

国税庁、法人向けマイページを9月から提供開始

国税庁は9月19日、e-Taxを利用する法人向けのマイページの提供を開始しました。マイページでは、e-Taxに登録された法人番号、事業内容等が、また法人税・消費税関係の情報についても、申告の際に参考になる届出書の提出状況や中間申告分の納税額などが表示されます。
これまで顧問税理士の変更や経理担当者の変更に伴う引継ぎが生じた場合、所轄税務署を訪れて届出書の提出状況の確認が必要なケースがありましたが、今後はマイページを確認することで、情報更新日時点のe-Taxに登録された情報を確認できることになり、手間の軽減が期待できます。各税目に関する情報更新は年に1回で、事業年度末から概ね1月以内に行われます。
なお、マイページを利用することが出来るのは納税者に限られ、顧問税理士は直接顧問先のマイページを確認することは出来ません。

デジタル課税利益Bの取扱い

現在、グループ関連会社から商品を購入して第三者へ販売する取引を行っている企業は、独立企業間価格を算定する際に取引単位営業利益法(TNMM法)に基づいて算出するのが一般的です。ただ、この手続きは機能リスク分析や比較対象取引の抽出に手間と時間を要するだけでなく、抽出過程に主観的な要素が入る可能性があることから、納税者と税務当局間での意見の相違が生じる原因にもなっています。

そのため、基礎的なマーケティング、販売活動を行っている企業が独立企業間価格を算定する場合に、移転価格税制の適用の簡素化、合理化を目的として、予め定められた合理的な一定の利益率を適用することが検討されています。

利益Bに関する最終報告書は2024年1月までにOECDガイドラインに組み込まれる予定ですが、新しい算定基準による場合、グループ会社から商品を輸入し、日本国内の顧客へ販売している外資系企業の日本子会社にとって、従来から作成しているローカルファイルに多大な影響を及ぼすことになりそうです。

消費者向け電気通信利用役務の提供はインボイス制度の対象

登録国外事業者制度については、「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)の導入に伴い、令和5年10月1日付けで廃止されました。廃止後は、消費者向け電気通信利用役務の提供を行うについて、一般的な課税仕入れと同様に適格請求書発行事業者の登録を行っていない国外事業者から役務提供を受ける場合は、仕入税額控除の対象となりません。

このため、経過措置により令和5年9月1日において登録国外事業者であって、「登録国外事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出していない者については、令和5年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けたものとみなされます。

また、この経過措置により適格請求書発行事業者となった国外事業者については、適格請求書等に適格請求書発行事業者の登録番号を記載することにつき、困難な事情がある場合には、令和5年10月1日から令和6年3月31日までの間は、登録国外事業者名簿に記載された登録番号を記載することができることとされています。従って、事業者は受領した請求書が適格請求書発行事業者からの請求書なのか、注意深く確認することが必要です。

国税庁、内部事務のセンター化と申告書等の提出先

国税庁は令和3年7月から、税務署における「内部事務のセンター化」を順次拡大しております。
内部事務のセンター化とは、申告書等の入力処理や審査、還付金の処理等といった税務署が行う内部事務を業務センターに集約して処理する仕組みのことで、申告書・申請書等を書面提出する場合、国税庁では業務センター宛に”郵送”をお願いしています。
センター化の開始後であっても、納税者の所轄税務署は変更されませんので、e-Taxの送信先や申告書等の”持込み”先は所轄税務署となることに注意が必要です。

国税庁、インボイスで注意すべき事例集を公表

国税庁は7月31日、「インボイス制度において事業者が注意すべき事例集」を公表しました。
この事例集では、インボイス制度発行事業者の登録の取下げ・取消し手続き(これまで示されていなかった「登録日前に登録を取りやめる場合の取下げ手続き」も含まれる)や、2割特例の手続きなど、主に届出関係に関する留意点が取り上げられています。
インボイス制度の登録を取り下げる場合は令和5年9月30日までに取下書(書式の指定なし)を提出する必要があり、令和5年10月1日以後は「取下げ」ではなく「取消し」の手続きを行う必要があります。

2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要

インボイス制度を機に免税事業者から適格請求書発行事業者となった場合、仕入税額控除の金額を、特別控除税額(課税標準である金額の合計額に対する消費税額から売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額の100分の80に相当する金額)とすることができます。いわゆる2割特例制度を適用する場合、実質仕入税額の計算が不要となり、業種にかかわらず売上税額の8割を差し引いて2割の金額を納付することになります。
この2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間となります。事前の届出は不要で、消費税の申告時に消費税の確定申告書に2割特例の適用を選択することで適用を受けることができます。

国際的コンプライアンス確認プログラム

国際取引を行う多国籍企業にとって移転価格問題は切っても切り離せない問題です。移転価格文書の作成はもちろんのこと、将来的に移転価格紛争が起こるのを避けるために事前確認(APA: Advance Pricing Arrangement)制度を利用している企業もあります。
昨今OECDが中心となり、新たに国際的コンプライアンス確認プログラム(ICAP: International Compliance Assurance Program)を立上げ、従来のAPAとは異なる取り組みを始めています。ICAPとは多国籍企業グループの希望により、複数の国・地域の税務当局が、その国別報告書、マスターファイル及びローカルファイルといった移転価格文書に基づき、協調してハイレベルなリスク評価を行う取り組みです。
APAが合意内容に拘束力を持つのに対して、ICAPは申請法人の移転価格ポリシーが適切であることを保証するものにとどまる(拘束力はない)という特徴がありますが、APAの締結に2~4年要するのに対して、ICAPは半年から1年という比較的短期間で締結されることから、今後利用する法人が現れることが見込まれます。

売上げに係る対価の返還等を行う場合のインボイス交付の要否

インボイス発行事業者が課税事業者に対して、商品の返品や値引き、割戻しなどの売上げに係る対価の返還等(以下「返還等」)を行った場合、返還インボイスの交付義務があります。記載事項は主に5つで、次に示した通りです。
① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 返還等を行う年月日及びその基となった課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 返還等の基となる課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
④ 返還等の税抜価額又は税込み価額を税率ごとに区分して合計した金額
⑤ 返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率
一方、先週の税務ニュースにて”3万円未満の公共交通機関による旅客の運送”について、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるとお伝えしましたが、返還インボイスの交付義務についても免除の対象とされます。
また、売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合も返還インボイスは不要です。売手負担の銀行手数料を売上値引きで処理している場合についても同様で、振込手数料は一般的には1万円未満と考えられるために、売手の返還インボイスの交付義務は免除されます。