移転価格税制のコラム

「国際税務」とは、何でしょうか?

外資系企業は、国外関連者間で取引を行っているため、必ず移転価格の問題がついてまわります。最近の傾向として大規模法人は事前確認(APA)へ移行しておりますので、移転価格の調査は中規模法人が調査のターゲットになりつつあります。

もし、移転価格の調査が入った場合に、日本法人の利益率が親会社や他の海外の子会社の利益率よりも低いときは、移転価格の更正リスクは高くなります。調査では必ずなぜ利益率が低くなったのか理由を聞かれます。例えば景気変動、為替変動、製造工場の操業度の低下などの移転価格以外の要因によって利益率が低くなっている場合がありますので、利益率が低くなった原因を解明しておく必要があります。

国際税務の各論点

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BEPSプロジェクト
リーマンショック後の財政悪化や所得格差の拡大を背景に、一部の欧米多国籍企業が行っていた過度な租税回避行為について、政治的に見過ごすことができなくなってきました。
また同時に、国境を越えた電子商取引の広がりなどの経済のグローバル化に対しても、国際課税ルールが追いついていない状況がみられ、この結果、源泉地国でも居住地国でも十分に課税されない「二重非課税」の問題や、本来課税されるべき経済活動が行われている国で所得計上されない問題が顕在化してきました。
これらの状況を踏まえ、国境を越えた脱税・租税回避スキームに対し、国際協調の下、戦略的かつ分野横断的に問題解決を図るため、2012年6月より「BEPSプロジェクト」(BEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と利益移転)プロジェクト)が立ち上がりました。
BEPSプロジェクトは過度な租税回避行為を防止すべく、国際課税ルールを見直し、各国税務当局が協調して対処することを目的とするものであり、OECD/G20の各国税務当局が議論を積み重ねております。
移転価格税制の面では、BEPS行動13において、多国籍企業は企業グループ全体の概要・実績等を示す文書を作成し、各国税務当局に提出する義務が課されることとなりました。また、BEPS行動8-10において、無形資産等の取扱いについての新たな基準が設けられる予定であり、それを踏まえた移転価格税制への対応の在り方が求められております。
文書化の種類
BEPSプロジェクトに基づき、当局による移転価格税制に係る文書化制度が整備されております。ここでは文書の種類(届出書1種類+文書3種類)をご紹介します。

直前の会計年度の連結総収入金額が1,000憶円以上の多国籍企業グループの構成会社等である内国法人又は恒久的施設を有する外国法人で一定の要件を満たす法人は、以下の書類を提出する必要があります。(①・②・③は電子申告(eTax)により提出、④は社内で保管することになります。)

① 最終親会社等届出事項
最終親会社等に関する情報
② 国別報告書(CbCレポート)
国別の活動状況に関する情報
③ 事業概況報告事項(マスターファイル)
グループの活動の全体像に関する情報
④ 独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)
国外関連取引における独立企業間価格を算定するための詳細な情報

例えば、外資系企業の日本子会社の場合、本社(最終親会社)が上場しているような大規模法人で、グループの連結総売上高が1,000憶円を以上の場合、例え日本子会社の従業者が10人以下等の小規模事業所であってもこれらの文書を作成する必要があります。最終親会社が上場している場合は、Annual Reportなどで連結総売上高を確認することができますので、1,000憶円以上かどうかは事前に確認しておいた方が良いかもしれません。もし、該当する場合は、手始めに最終親会社等届出事項の提出が必要になりますので、本社と連絡を取りながら必要情報を入手することになります。外資系企業の場合、CbCレポートは本社が外国の当局へ提出している場合が多いため、提出状況を確認しておいた方が良いかと思われます。また、マスターファイルは本社主導で作成している場合が多いため、そのまま取り寄せれば事足りるでしょう。なお、ローカルファイルは、本社と連絡を取りながら子会社主導で作成していく場合が多いかと思われます。本社がローカルファイルを作成している場合もありますので、その際はローカルファイルを取り寄せて日本の税務当局が要請している内容に合致しているか検討する必要があります。
国別報告事項(CbCレポート)の構成
特定多国籍企業グループが提出しなければならない書類の一つに国別報告事項(CbCレポート)というものがあります。
CbCレポートには、その特定多国籍企業グループの各国又は地域ごとの収入金額、税引前当期純利益の額、納税額、資本金の額、従業員数及び有形資産の額等の様々な情報を記載しなければなりません。

また、CbCレポートの提出方法には、条約方式と子会社方式の二つがあります。
原則としては条約方式により提出することとなっていますので、その特定多国籍企業グループの最終親会社等がCbCレポートを提出することとなっております。
この場合には日本の税務当局は、その最終親会社等の所在する国の税務当局から情報交換規定に基づきCbCレポートを入手します。
例外として、最終親会社等の所在する国の税務当局が日本の税務当局に対しCbCレポートの提供をすることができない場合には、子会社方式により、日本の子会社がCbCレポートを提出します。
事業概況報告事項(マスターファイル)の構成
事業概況報告事項とは、主にグループの活動の全体像に関する情報を示した文書です。
連結総収入金額が1,000億円以上の特定多国籍企業グループの中で、国内に構成会社や恒久的施設(PE)を有する場合は、事業年度終了から1年以内に提供を行う必要があり、正当な理由なく期限内の提供を行わない場合は、30万円以下の罰則規定が設けられております。
英語での提供も認められていますが、翻訳文の提出を求められる場合があります。
文書の報告記載項目は特定多国籍企業グループの組織構造、事業の概要、財務状況
その他の措規第22 条の10 の5第1項各号に掲げる事項とされており、詳細な定めがあります。
ローカルファイルの構成
ローカルファイルとは、主に国外関連取引における独立企業間価格を算定するための詳細な情報を示した文書です。
一の国外関連者との前事業年度の取引について、①国外関連取引の合計金額が50億円以上、又は②無形資産取引の合計金額が3億円以上である法人は、確定申告書の提出期限までに作成を行う、いわゆる同時文書化が義務化されました。
国外関連取引を行った法人は作成義務者とされ、同時文書化対象取引については提示を求められてから45日以内、同時文書化免除取引については60日以内の調査官の指定する日を提出期限とします。
言語の指定はありませんが、翻訳文の提出を求められる場合があります。
文書の報告記載項目は、独立企業間価格(ALP)を算定するために必要と認められる書類
(措規第22 条の10 の第1項各号に掲げる事項)とされており、詳細な定めがあります。
ローカルファイルとマスターファイルの関係
特定多国籍企業はBEPSプロジェクトに基づき、マスターファイル及びローカルファイルの作成が義務付けられています。
マスターファイルにはその特定多国籍企業グループの組織構造、事業の内容及び財務状況等を記載しなければなりません。
一方で、ローカルファイルにはその法人が行った国外関連取引について、その取引が独立企業間価格で行われていることを示す内容を記載しなければなりません。
多国籍企業と税務当局との間には情報の非対称性があるため、マスターファイルの提出を義務付けることにより、税務当局は多国籍企業のグローバルなバリューチェーンの鳥瞰図を取得し、重要な移転価格リスクがどこに潜在しているかを特定しやすくなります。
よって、税務当局はマスターファイルにより移転価格リスクを特定し、その詳細をローカルファイルにおいて確認することが可能となります。
シークレットコンパラブル
シークレットコンパラブル(推定課税)とは、税務調査において、課税当局が納税者に対して、期日を指定して、国外関連者との取引に係る「独立企業間価格を算定するために必要な書類」等(比較対象とした企業や比較対象取引など、独立企業間価格の算定・分析に必要または重要な書類)の提出を求めた場合において、期日までに納税者側から資料の提出がされなかったとき、課税当局が一方的に独立企業間価格を算定して推定課税することを言います。
課税当局は守秘義務の観点から推定課税する際に算定基礎となった比較対象企業名や比較対象取引を具体的に開示しません。例えば「納税者の事業と比較対象企業の事業内容・環境の違い」などについて反論することが出来なくなるため、推定課税を受けると納税者にとっては非常に不利な立場に置かれることになります。
平成28年度の税制改正において、移転価格税制に係る文書の作成・保存の義務が設けられております。最近の調査においては、通常の税務調査においても上記資料の提出を求められることが非常に増えてきておりますので、納税者にとって移転価格税制に係る文書化は必須といえます。
寄付金課税との関係
税務上、国外関連者に対する寄付金に該当する場合、全額が損金不算入となります。国外関連者に対する寄付金と認定される事例として、例えば海外の親会社へ実体のない経営管理費を支払った場合、海外の関連会社からの指示で金銭消費貸借契約書等何もない状態で資金を送金した場合などが挙げられます。

一方、日本子会社から見て関連会社からの仕入金額が高い場合で、継続的に日本子会社の利益率が著しく低い場合などは、税務当局から移転価格に問題があると指摘を受ける可能性があります。

寄付金課税も移転価格税制の一部ですが、税務調査の傾向としてスポットの国外関連取引で、本来もらうべき(支払うべき)金額をもらっていない(支払っていない)取引があるときは、寄付金課税として指摘を受ける可能性が高いように思われます。一方、仕入れ値の決定に問題があるなど継続的な取引に関わる場合は移転価格での指摘を受ける傾向があるようです。本格的な移転価格の調査が入る場合、最短でも1年、時には2年以上に及ぶことがありますので、国外関連取引については、継続的あるいはスポットの取引いずれの場合でも慎重に判断、金額を決定する必要があります。サンプルテキストサンプルテキストサンプルテキストサンプルテキストサンプルテキストサンプルテキストサンプルテキストサンプルテキストサンプルテキストサンプルテキストサンプルテキスト税務上、国外関連者に対する寄付金に該当する場合、全額が損金不算入となります。国外関連者に対する寄付金と認定される事例として、例えば海外の親会社へ実体のない経営管理費を支払った場合、海外の関連会社からの指示で金銭消費貸借契約書等何もない状態で資金を送金した場合などが挙げられます。

一方、日本子会社から見て関連会社からの仕入金額が高い場合で、継続的に日本子会社の利益率が著しく低い場合などは、税務当局から移転価格に問題があると指摘を受ける可能性があります。

寄付金課税も移転価格税制の一部ですが、税務調査の傾向としてスポットの国外関連取引で、本来もらうべき(支払うべき)金額をもらっていない(支払っていない)取引があるときは、寄付金課税として指摘を受ける可能性が高いように思われます。一方、仕入れ値の決定に問題があるなど継続的な取引に関わる場合は移転価格での指摘を受ける傾向があるようです。本格的な移転価格の調査が入る場合、最短でも1年、時には2年以上に及ぶことがありますので、国外関連取引については、継続的あるいはスポットの取引いずれの場合でも慎重に判断、金額を決定する必要があります。
グループ内役務提供と移転価格
グループ内役務提供(Intra-Group Services)とは、一の企業がグループ内の他の企業のために経営・財務・業務・事務管理上の活動を提供することを言います。
上記の活動を行う場合において、当該活動が役務の提供に該当するかどうかは、当該活動が国外関連者にとって経済的・商業的価値を有するものかどうかにより判断します。
具体的には、当該国外関連者と同様の状況にある非関連者が他の非関連者からこれと同じ活動を受けた場合に対価を支払うかどうか又は当該法人が当該活動を行わなかったとした場合に国外関連者自らがこれと同じ活動を行う必要があると認められるかにより判断します。(移転価格事務運営要領3-10)

グループ内役務提供に該当する場合には、その役務の提供に関し、独立企業間価格を算定し、それに基づいた対価を回収する必要があります。
しかし、当該役務提供が当該法人又は国外関連者の事業活動の重要な部分に関連していない等の要件を満たす場合には、役務提供に係る総原価の額を独立企業間価格とすることが認められます。
また、その役務提供が支援的・補助的なものである等の要件を満たす場合には、その役務提供を低付加価値グループ内役務提供と定義し、総原価の額に5%のマークアップを乗じた金額を独立企業間価格とする簡便的な方法も認められます。
独立企業間価格(ALP)とは?
独立企業間価格(Arm’s length price)とは、国外関連者との取引について、もし全く同じ条件の下で、その取引を独立した第三者との間で行った場合に成立するであろうと認められる価格を指します。
移転価格税制においては、独立企業間価格と異なる価格で国外関連者(資本や人的に支配関係にある外国会社)と取引が行われた場合に、課税当局はその取引価格が独立企業間価格で行われたものとみなして、その価格差により減少した所得(=海外に移転した所得)に対し課税を行うことができます。もし税務調査においてこの点を指摘されたときは、国外関連者との取引価格が独立企業間価格で行われていることを証明しなければならない可能性がありますので、独立企業間価格の算定は非常に重要と言えます。

わが国における独立企業間価格の算定方法は、OECD移転価格ガイドラインにおいて国際的に認められた方法に沿った次のようなものとなっております。

① 基本3法
・ 独立価格比準法
・ 再販売価格基準法
・ 原価基準法
② その他の方法
・ 利益分割法
・ 取引単位営業利益法(TNMM)
など
独立価格比準法(CUP法)
独立価格比準法(CUP法)は、わが国における独立企業間価格の算定方法のうち、基本三法の一つとなるものです。
CUP法とは、法人と国外関連者との取引に係る棚卸資産と同種の棚卸資産を非関連者が同条件で売買した場合、その取引の対価の額(又は条件に差異がある場合、対価の額を調整した額)をもって、独立企業間価格とする方法です。
つまりCUP法では、非関連者間における取引価格を関連者間における取引価格と比較することで関連者間取引における独立企業間価格性を検証します。比較可能な取引価格に関する内部データもしくは外部データの入手が可能である場合には、CUP法は一般に最適な移転価格算定方法であると認められています。
利益水準指標(PLI)とは?
PLIとはProfit Level Indicatorの略称で、利益水準指標を指します。
ALPで記載した通り、独立企業間価格を算定するには、様々な商流や取引商品等に応じて多数の算定方法が定められています。
中でも限定条件の少ない取引単位営業利益法(TNMM)では、売上高営業利益率、フルコストマークアップ率、ベリーレシオの3種類のPLIが比較指標として認められています。
・売上高営業利益率
営業利益を売上高で除した値を比較指標とします。販売会社の比較指標として用いられます。
・フルコストマークアップ率
営業利益を総原価で除した値を比較指標とします。製造会社、役務提供取引の比較指標として用いられます。
・ベリーレシオ
売上総利益を販売費及び一般管理費で除した値を比較指標とします。仲介取引、役務提供取引の比較指標として用いられます。
上記3種のPLIでは、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費含めた数値を指標にするため、売上価格を指標とするCUP法や、売上総利益を指標とするRP法やCP法よりも、取引商品や商流、保有する機能や負担するリスク等、それぞれ異なる特性を包含したうえでの比較が行えると考えられています。
再販売価格基準法(RP法)
再販売価格基準法(RP法)は、独立企業間価格の算定方法のうち、基本三法の一つとなるものです。
RP法とは、国外関連取引に係る棚卸資産の買手が、第三者(特殊関係のない者)に対して当該棚卸資産を販売した価格(再販売価格)から、通常の利潤(売上総利益)を控除した金額に基づき、移転価格が独立企業原則に基づいているかどうかを決定します。

RP法は、再販売業者もしくは卸売業者のように一般的に取引される有形資産に重要な付加価値を加えない商流の業種に適した移転価格算定方法であるいえます。

但し、検証対象取引及び比較対象取引が、製品、契約条件、各当事者が果たす機能や負担するリスクについて、高い比較可能性を有することが必要となります。売上総利益による比較となるため、取引価格そのものを比較するCUP法よりは厳密なレベルの同一条件は要求されないものの、公開データからの分析を前提すると、現状では実用のハードルが高いといえます。
利益分割法(PS法)
利益分割法(PS法)は、関連者間取引に係る合算利益を、その取引に参加する関連者の寄与度に応じて分割する方法です。
この利益分割法は、利益の分割基準の設定方法によって、更に比較利益分割法、残余利益分割法、寄与度利益分割法の3種類に分類されます。

比較利益分割法は、国外関連取引と類似する非関連者間取引に係る非関連者間の分割対象利益の配分割合を用いて、分割対象利益を法人及び国外関連者に配分することにより独立企業間価格を算定する方法のことをいいます。ただし実務上は、第三者間における所得の配分割合の情報入手が困難であることから、適用が難しいと考えられます。

残余利益分割法は、一般的に関連者双方において価値ある無形資産を保有している場合において適用される移転価格算定方法です。両者の合算利益から基本的活動による利益をそれぞれ分配し、余った残余利益をそれぞれの無形資産形成に要したコスト等で按分する方法です。

また、寄与度利益分割法は、国外関連取引に係る分割対象利益等を、それぞれの支出人件費等の費用の額など、その発生に寄与した程度が推測できる要因に応じて配分することにより独立企業間価格を算定する方法のことをいいます。比較対象となる非関連者間取引を見出す必要がなく、企業内部の情報のみで適用することが可能である点が特徴として挙げられますが、寄与度を測る分析において客観的な基準を設定するのが難しい方法です。
取引単位営業利益法(TNMM法)
取引単位営業利益法(TNMM法)は、取引ごとに営業利益の水準を比較する方法です。
基本三法(CUP法、RP法及びCP法)のように独立企業間の取引価格(ALP)を直接比較するのではなく、独立企業間の取引の結果生じるであろう営業利益の水準を算定し、それと比較対象会社の利益水準が同じであることをもって、個々の取引価格が合理的であることを確認する方法です。
なお、TNMM法の適用に際しては、検証対象者の果たす機能が限定的であることに加え、高付加価値な無形資産および特殊な資産を所有していないことが求められるので注意が必要です。
また、TNMM法では、利益水準指標(PLI)として、売上高営業利益率を使用するのが一般的ですが、売上高営業利益率に代えて、フルコストマークアップ率、ベリーレシオを使用することも認められています。関係会社間取引の特性や自社の機能・リスクを踏まえて指標を決定する必要があります。
外貨建て支払金額の源泉徴収税額の計算
非居住者や外国法人に対して国内源泉所得の支払いをする場合に、その所得の性質に応じて、支払いの際に所得税を源泉徴収して納付する必要があります。

支払うべき国内源泉所得の金額が外貨で表示されている場合には、支払額の決済を邦貨または外貨のいずれで行うかによりそれぞれ定められた方法で邦貨に換算し、その邦貨換算額に税率を乗じて税額を求めることになります。

外貨表示の金額を邦貨で支払う場合は、その支払いに関する契約などにおいて定められている換算方法等に従って計算することとなります。

外貨表示の金額を外貨で支払う場合、その支払期日が契約において定められているならば、契約に応じた日における電信買相場により邦貨に換算した金額を納付することとなります。
支払期日が契約において定められていない場合は、現実に支払った日における電信買相場により邦貨に換算した金額を納付することとなります。
機能及びリスク分析
ローカルファイルの中に記載する項目の一つに機能及びリスク分析が挙げられます。これは国外関連取引を行う法人と国外関連者の機能とリスクの内容を詳細に記載する資料ですが、ローカルファイルを作成する上で最も肝になる部分です。機能及びリスク分析は、法人が保有している機能が多く、また負っているリスクが多いのであれば、相応の利益を計上してしかるべきという考え方に基づいており、実態に即した利益を計上しているかどうかが検討されます。

機能分析であれば、法人及び国外関連者について、それぞれどのような機能があるのか列挙し、活動内容を記載することになります。例えば、研究開発を行っているのか、製造部門はあるのか、営業・販売活動はどのように行われているのか、販売促進はどのように行っているかなどを記載します。

一方、リスク分析では、法人及び国外関連者がどこまでのリスクを負っているのか、各社についてそれぞれ記載します。例えば、原材料の価格変動や販売価格の変動、在庫リスクはどちらの会社がどの程度までリスクを負っているのかを記載することになります。
コンパラブルの選定
比較対象取引(コンパラブル)とは、独立企業間価格の算定の基礎となる取引であり、国外関連取引との類似性の程度が十分な非関連者間取引を言います。
比較対象取引には、法人または国外関連者が第三者と行う取引(内部比較対象取引)と非関連者同士の取引(外部比較対象取引)があります。

内部比較対象取引については、取引に関する情報を法人又は国外関連者が有していることから、該当するかどうかの判断は容易と考えられます。

外部比較対象取引に該当するどうかを判断するには、なるべく非関連者間取引の事業形態や置かれている経済環境が国外関連取引と同様である必要があります。そのために、「比較対象取引候補の選定」と「比較対象取引候補のスクリーニング(選別作業)」の2つの過程により、複数の非関連者間取引から選定を行います。

・比較対象取引候補の選定
企業情報データベース及び同業団体からの業界情報等を用いて、①非関連者間取引か否か、②適切な取引単位の価格データまたは利益率算定のためのデータを入手できるかどうか、③希望する独立企業間価格算定方法に利用できる情報かどうか等を検討します。

・スクリーニング(選別作業)
比較対象取引候補の中から個々の事案に対して、定量分析や定性分析といったスクリーニング方法により、一定の基準に満たないものは比較可能性が不十分として候補から除外します。

上記過程を経て、比較対象取引が選定されます。
選定過程や選定結果等は、企業情報データベースの選定過程に基づきローカルファイル中に記載する必要があります。
定量分析
独立企業間価格の算定にあたり、比較対象企業をデータベースから絞り込む手続きをスクリーニングといいます。
スクリーニングには、定量基準によるものと定性基準によるものがあります。定量基準によるスクリーニング(定量分析)とは、条件を数値などにより指定して母集団から絞り込むものです。通常の手順としては、まずデータベースから定量分析により一定程度まで絞り込み、その後数値では測れない項目について分析する定性分析により、さらに絞りこむ作業が行われます。
定量分析では、一般的に下記の条件等により絞り込みが行われます。
・業種(産業分類コードなどを用います)
・地理的条件(国・地域など)
・独立性指標(比較対象企業は独立企業でなければならない)
・事業規模が著しく異なる企業の除外
・黒字企業でない企業の除外
・研究開発費比率が高い企業の除外
定性分析
定性分析では、定量的に測れない項目について分析していきます。具体的には、機能が異なる、取扱製品が著しく異なる、市場が異なる、特定の法人への依存度が高いなど明らかに自社と異なる内容であれば、コンパラブルから外していく必要があります。定性分析のコツとして、定量分析を行った後の時点で残った会社のうち、自社と同じ製品群を取り扱っているものだけ抜き出すという視点に立つと、ほとんどのコンパラブルが外されてしまいますので、前述した項目について明らかに異なるものを外していく観点で行った方が良いかと思われます。

例えば自社の取扱製品が、販売後のアフターケアも必要な商品であれば、売切り商品を取り扱っている会社はコンパラブルから外した方が良いと理解できます。また、当社が一次卸の場合は、コンパラブルから二次卸は除外すべきでしょう。定性分析までを行った結果、最終的なコンパラブルとして10社前後の会社が残れば理想的なベンチマーキングと言えそうです。
運転資本調整
運転資本調整とは、独立企業間価格の算定の際に選定した比較対象企業との間の運転資本の水準に差異がある場合に行う一定の調整を言います。
売掛金、買掛金、棚卸資産の水準を比較し、差異がある場合には金利相当分を考慮して営業利益率等を調整する方法です。
運転資本調整は必ず行わなければならないものでは無く、比較対象企業との比較可能性を高めるために行うものであるため、その調整の可否については検討が必要となります。
ローカルファイルの更新
ローカルファイルの更新頻度には正式な定めはありません。
しかしながら、国税庁『独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)作成に当たっての例示集』では、信頼ある比較可能性分析を行うためには、比較対象取引の選定及び情報の更新を毎年行うことが望ましいですが、国外関連取引と比較対象取引における事業の状況が変わらない場合には、比較対象取引の選定を3年ごとに見直すこととしても差し支えないと記載されています。
この場合、自社の取引の状況および比較対象取引として選定した外部会社の取引の状況に変更がないことが前提となっているので、更新の必要性を検討する意味での見直しについては、毎年行う必要があるといえます。
また、更新の手段にも、比較指標のみ最新の事業年度のものにアップデートする形や比較対象取引の選定から見直すような形もあります。実際に信憑性の高い数値を維持するためには、どこから見直しを行うべきか検討する必要があります。
価格調整金とは
価格調整金とは、すでに行われた国外関連取引の対価の額を事後に変更する際の調整金のことをいいます。
移転価格事務運営要領3-21においては、当該調整が国外関連者に対する金銭の支払又は費用等の計上が行われている場合には、当該支払等に係る理由、事前の取決めの内容、算定の方法及び計算根拠、当該支払等を決定した日、当該支払等をした日等を総合的に勘案して検討し、当該支払等が合理的な理由に基づくものと認められるときは、取引価格の修正が行われたものとして取り扱うとされています。
もし、当該支払等が合理的な理由に基づくものと認められない場合には、国外関連者に対する寄付金としての課税リスクが高まります。
価格調整金と税関申告
国外関連者間の取引価格を調整するための価格調整金は、その後の税関申告にも影響を及ぼすことになります。例えば海外親会社から商品を輸入している日本子会社を例に挙げると、価格調整金により仕入価格が増額する場合と減額する場合の双方が考えられます。輸入貨物の課税価格は、実際に支払われた価格に様々な要素が加減算されますが、その中に価格調整金による仕入価格の調整も加減算の要素に含まれています。従って、例えば価格調整金により仕入価格が増加した場合は、課税価格が増加することになりますので、税関へ修正申告する必要が出てきます。通常、価格調整金はまとまった金額で調整されますが、実際の修正申告は当初の輸入許可書ごとに基づいて行われます。一般的に税関の修正申告はフォワーダーを通じて行うことが多いため、フォワーダーを交えて税関窓口と連絡を取る必要があります。なお、価格調整金の金額が多い場合、修正申告の頻度を年一回あるいは四半期ごとにするのか、検討する会社も多いようです。また、税関への修正申告により輸入消費税等が増えますので、その後の消費税の申告にも影響を及ぼすことになります。
事前確認(APA)の概要
移転価格税制に関する事前確認(APA: Advance Pricing Arrangement)とは、国外関連取引に係る独立企業間価格の算定方法等について合理的であることを、納税者の申出に基づいて課税当局が事前に確認を行う制度を言います。
事前確認については、近年の国際取引の増加を反映し、その申出件数が増加してきていることから、国税庁においては、担当者を増員するなど、処理促進のための体制整備を図ってきているところです。
事前確認には、ユニラテラル(国内)の事前確認と、バイラテラル(二国間の相互協議)の事前確認があります。
ユニラテラルの事前確認は、日本国内において納税者が税務当局に独立企業間価格の算定方法等について確認を求めるもので、この場合は国外関連取引を有する外国の納税者が外国税務当局に課税されるリスクの回避までは保証されませんが、バイラテラルの事前確認に比べ、通常、確認にいたるまでの処理が早くなります。
一方バイラテラルの事前確認は、日本及び外国において、対象となるそれぞれの納税者が独立企業間価格の算定方法等について確認を求めると同時に、これらの内容について税務当局間での合意を求めるものであり、移転価格課税についての予測可能性を確保すると同時に二重課税のリスクを回避することを目的とします。
バイラテラルの事前確認では納税者に双方(又は多数の国)の税務当局から法的安定性を得ることができるため、日本を含む多くの国でバイラテラルの事前確認が行われています。
ユニラテラルAPAとは
ユニラテラルAPAは、一方の国の国税当局のみに事前確認をとる制度であるため、当事者双方の国の国税当局へ確認をとるバイラテラルAPAに比べて早期に合意を得ることができます。すなわち、ユニラテラルAPAはバイラテラルAPAに比べて時間とコストを抑えることができるというメリットがありますが、他方の国から移転価格の問題を提示されるリスクは残るというデメリットもあります。ただ、必ずしも相手国の国税当局に認められないわけではなく、ユニラテラルAPAで採用したALPが合理的なものであれば、相手国の国税当局にも認められる可能性がありますので、あながちバイラテラルAPAの方が優れているということはできません。実務的には時間とコストをかけてもバイラテラルAPAを採用する企業が多いように見受けられます。なお、一般的にユニラテラルAPAでは、ALPのレンジを算出後、Upperは決めずにLowerのみを決めることが多いようです。例えばALPが3~5%の場合、3%以上と設定することになります。
バイラテラルAPAとは
バイラテラルAPAとは、日本及び関連会社居住国の税務当局同士が相互協議を経て、双方の合意を得られる独立企業間価格を事前確認する制度です。
ユニラテラルAPAとは異なり、双方の合意が得られるため、包括的な二重課税リスクから守ることができるメリットがありますが、相互協議に多大な労力や時間を要するというデメリットがあります。
バイラテラルAPAを利用する場合には、日本及び関連会社居住国の相互協議の状況を踏まえた上で、検討する必要があるといえます。
相互協議
相互協議とは、法人が一方の又は双方の締約国等の措置による租税条約の規定に適合しない課税を受けた場合等に、日本の税務当局と相手方の税務当局との間で解決を図るための協議手続きをいいます。
本来租税条約は、二重課税を排除することを目的として締結されていますが、上記のように租税条約の規定に適合しない課税を受け、国際的な二重課税が生じることがあります。
このような場合に、二重課税を排除するために行われるのが相互協議となります。

相互協議は、納税者の申立てにより行われることとなりますが、近年、国際的な取引の増加により、相互協議事案の発生件数も増えてきています。
また、相互協議が行われてから両国の税務当局が合意に至るまでの期間は2年から3年程はかかると言われています。