坂下国際税理士法人が紹介する国際税務とは?

国際税務とは、二重課税を防ぎ利益を守る仕組みです

企業が国境をまたいで(国際間で)取引を行うとき、その取引は「国際取引」になります。
あるいは、海外の企業が日本で活動して利益を得た時、その取引は、海外の企業と日本の企業の間で行われる「国際取引」ということもできます。
このとき、そこで発生した利益に対して、日本で課税されるのか外国で課税されるのか、あるいは両方で課税されてしまうのか、課税されてしまった場合どうすればいいのか・・等々、いろいろな問題が発生してくると思います。
この取り決めをしているのが、「国際税務」というわけです。
言葉を変えていえば、上記のような国際間の取引があった場合、いったいどの国が、どういう利益について、どんな方法で税金を課するのか?それに対してどうすればいいのか?を考えるのが「国際税務」なのです。

それでは「国際税務」の考え方がなぜ必要なのでしょうか?
国際間で行われる「国際取引」から生じる利益について、その双方の国で課税されてしまうことを、「二重課税」といいます。
せっかく国際取引で利益を獲得しても、その利益に対して二重に課税されてしまえば、結局は手許に残る利益が少なくなり損をするわけです。
ここで、どうすれば二重課税のリスクを避けられるのか、二重課税が起こってしまった時、どうするのかを考えるのが「国際税務」の考え方です。

二重課税が生じた場合、日本の税制上「外国税額控除」という制度が設けられており、一部制限があるものの二重課税を排除することができます。一方、最初から二重課税を発生させないように、特定の取引についてある一方の国のみが課税できるというような二国間で取決めをしている「租税条約」があります。

近年では、国境をまたいだ複雑なストラクチャーを組むことにより、行き過ぎた節税を防止する目的から、OECD主導のもとBEPS:Base Erosion and Profit Shiftingプロジェクト「税源浸食と利益移転」が立ち上げられ、様々な歯止めがかけられています。

以上のように国際税務を取り巻く環境は毎年変化しており、課税関係を適切に把握するには、これらの取決めを確認する必要があります。こちらのコラムでは、国際税務の論点ごとにエッセンスをご紹介しております。

国際税務の各論点

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内国法人と外国法人
法人税法上では、法人を内国法人と外国法人に区別し、それぞれに課税範囲を定めています。

日本国内に本店又は主たる事務所を有する法人を“内国法人”といいます。会社法等の日本法に準拠して設立された法人は内国法人に該当します。
内国法人の課税範囲は、日本国内で稼得した所得のみならず、外国で稼得した所得に対しても法人税が課税されますので、すなわち全世界所得課税となります。

一方、内国法人に該当しない法人は“外国法人”となります。
外国法人の課税範囲は、日本国内で稼得した所得、すなわち国内源泉所得に対してのみ法人税が課税されます。なお、国内源泉所得の課税範囲は、外国法人が日本国内に恒久的施設(PE)を有しているかどうかで異なります。

例えば海外に拠点を持つ企業が日本への進出を考慮した際に、現地子会社として設立を行う場合(内国法人)と、支店として拠点を設ける場合(外国法人)とでは、税務上の扱いが大きく異なりますので、進出する際には十分な検討が必要となります。
PEとは?
恒久的施設(PE)とは?

PEとはPermanent Establishment(恒久的施設)の略称であり、「事業を行う一定の場所等」をいいます。具体的には、①事業の管理を行う場所・支店・事務所等その他事業を行う一定の場所(支店PE)、②非居住者等の国内にある建設、据付けの工事又はこれらの指揮監督の役務の提供で1年を超えて行う場所(建設PE)、③非居住者の代理人等で、その事業に関し、反復して契約を締結する権限を有し、又は契約締結のために反復して主要な役割を果たす等の一定の者(代理人PE)があります。
ただし、上記に該当するものであっても、外国法人の事業の遂行にとって準備的・補助的なものである場合にはPEに該当しないこととなります。
しかし、PE認定の人為的回避を防止するため、PEに該当しない活動については次第に縮小される傾向となっております。

また、近年の税制改正により、日本における課税について総合主義から帰属主義に変更されたことにより、外国法人に対しては一部を除いてPEに帰属する所得にのみ課税されることとなりました。
従って、外国法人が日本において課税されるかについては、日本にその外国法人のPEがあるかどうかがポイントとなります。
PEなければ課税なし
「PEなければ課税なし」というフレーズは、国際税務の世界で、外国法人に対して使われるものです。

法人税法においては、法人を内国法人と外国法人に区別しますが、このうち内国法人は「全世界所得課税」となり、世界のどこでどのような種類の所得が発生しようとも、日本で課税されます。
一方、外国法人に対する日本の課税ですが、原則として、まずその外国法人が日本に恒久的施設(PE)を有しているかを確認し、PEに帰属する所得のみを「日本で発生した所得(国内源泉所得)」として日本において課税する、という考え方があります。
ただしその所得の種類によって、例えば国内にある資産の運用・保有、国内にある資産の譲渡、人的役務の提供事業の対価など一定のものについては、日本にPEが無くても課税される場合があります。しかしそれ以外の所得(法人の事業活動から生じる所得)については、日本国内にある外国法人のPEに帰属するものが国内源泉所得になりますので、日本にPEがない外国法人は、事業所得については日本で課税されないこととなります。

この考え方は、日本の国内法(法人税法・所得税法)だけではなく、主な租税条約(国際的二重課税を排除し、課税権を決定するために締結される条約)においても早くから導入されてきたものです。
租税条約とは?
国際取引では、必ず相手国が存在します。日本に国内税法があるのと同様に、相手国にも独自の国内税法が存在します。国内税法は各国が独自に定めておりますので、ある取引について日本の税法と相手国の税法で取り扱いが異なることも多く、お互いが課税権を主張することにより、同一取引について二重課税が生じる可能性があります。その結果、納税者の税負担が過度に重くなる可能性があることから、国と国の間で「租税条約」を締結することにより二重課税を排除しております。租税条約は両国間の二重課税の排除のみならず、両国間の情報交換を推進するために締結されております。2021年4月1日現在、日本は79条約、143か国・地域と租税条約を締結しております。

国内税法と租税条約で規定が異なる場合には租税条約が優先して適用されます。なお、先進国の租税条約は「OECDモデル条約」に基づいて規定されております。
なお、租税条約が締結されていない国・地域の場合は国内税法が適用されることになります。

2012年には多国籍企業による人為的な課税逃れに対処するため、OECDによりBEPSプロジェクトが立ち上がり、2015年には最終報告書がとりまとめられました。
これを踏まえ、日本においてもOECDの動向が取り入れられ、2016年には移転価格の同時文書化義務(ローカルファイル、国別報告書、マスター・ファイル)、2018年には、無形資産の定義及びディスカウント・キャッシュ・フロー法等が新設されました。
これらについては別のコラムで詳しく取り上げます。
MLIとは?
MLIとは、正式名称をBEPS防止措置実施条約(MLI “Multilateral Convention to Implement Tax Treaty Related Measures to Prevent Base Erosion And Profit Shifting”)といいます。昨今の多国籍企業による人為的な課税逃れに対処するために、OECDが主導して立ち上げたBEPSプロジェクトの一環で2018年7月1日に発行されております。MLIは、2021年3月30日現在、93か国・地域が署名しております。
MLIの規定は各国で適用する項目を選択することができ、日本では恒久的施設(PE)の人為的回避に関する規定等について適用することが決まっております。また、MLIが従前の租税条約に優先して適用されるかどうかは、各締約国の判断に委ねられております。

今回MLIが適用されることにより、具体的に実務に影響が出る項目の一つにPEの問題が挙げられますが、詳細については別のコラムで取り上げます。
国内源泉所得の区分
1.事業所得
国内において行う事業から生じた所得、任意組合等を通じた所得の分配(所得税法)、土地などの譲渡により生ずる所得(所得税法)

2.人的役務提供事業の所得
国内において行う弁護士、芸能人などの一定の人的役務の提供に対する対価

3.不動産等の貸付けによる所得
国内にある不動産や不動産の権利などを貸し付けたときの対価など

4.債券、預貯金等の利子等の所得
日本の国債・地方債や預貯金の利子など

5.配当等の所得
内国法人から受ける利益の配当など

6.貸付金利子
国内で業務を行う者に対する貸付金で、かつその業務に係るものである貸付金の利子

7.使用料等
国内で業務を行う者から受ける、工業所有権、著作権、機械・装置等の使用料、またはその譲渡による対価で一定のもの

8.給与その他人的役務の提供(所得税法のみ)
国内において行う勤務その他の人的役務の提供に基因するもの

9.事業の広告宣伝のための賞金
国内において行う事業の広告宣伝のための賞金(金品や旅行などの経済的利益)

10. 生命保険契約に基づく年金等
国内にある営業所などを通じて締結した生命保険契約に基づいて受ける年金で一定のもの

11. 定期積金の給付補てん金等
国内にある営業所などが受け入れ等をした定期積金などの給付補てん金など

12. 匿名組合契約等に基づく利益の分配
国内で事業を行う者に対する出資について、匿名組合契約等で一定の契約に基づいて受ける利益の分配
居住者と非居住者
法人税法上では、法人を内国法人と外国法人に区別し、それぞれに課税範囲や課税方法を定めていましたが、所得税法上でも同様に、個人に対する区分が存在します。

国内に住所を有し、又は、現在まで引き続き1年以上居所を有する個人を”居住者”といいます。ここでの住所とは個人の生活の本拠とされ、具体的には、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断されます。また、ここでの居所とは、その人の生活の本拠という程度には至らないが、その人が現実に居住している場所とされています。
居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に日本国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年以下である個人を”非永住者”といい、それ以外の居住者については“非永住者以外の居住者(永住者)”とされています。

一方で、居住者以外の個人を”非居住者“としています。

分類毎の課税方法や範囲については、居住者と非居住者の課税関係をご確認下さい。
居住者と非居住者の課税関係
所得税法上、個人のうち居住者を“非永住者以外の居住者(永住者)”又は“非永住者”に分類し、居住者以外の個人を“非居住者”と分類しており、それぞれ課税範囲及び課税方法が異なります。

永住者については、その個人が稼得したすべての所得に対して課税されます。
したがって、国内源泉所得のみならず、国外源泉所得に対しても課税されます。

非永住者については、国外源泉所得以外の所得及び国外源泉所得のうち日本国内で支払われたもの、又は国外から送金されたものに対して課税されます。

非居住者については、国内源泉所得に対してのみ課税されます。
また、課税方法については申告納税方式と源泉徴収方式の2つがあり、どちらの課税方法が適用されるかは国内源泉所得の種類、恒久的施設の有無、恒久的施設に帰せられる所得かどうかにより決定されます。
このように、非居住者の所得については、それが国内源泉所得に該当するか、該当した場合にはどの種類の所得なのか、その非居住者が恒久的施設を有するか、さらにその所得が恒久的に帰せられる所得なのかを検討する必要があります。
総合主義と帰属主義
外国法人に対する課税についての考え方としては、「総合主義」と「帰属主義」という違った2つの考え方があります。
「総合主義」とは、その外国法人が日本の国内に支店などのPE(恒久的施設)を有していれば、その外国法人が日本で得た国内源泉所得(ここには本店が日本に直接投資して得た所得も含まれます)のすべてを日本で申告して課税する必要があるという考え方です。
「帰属主義」とは、その外国法人が日本で申告すべき所得を、その外国法人の有するPEに帰属する所得に限定するという考え方です。帰属主義の考え方によれば、国内源泉所得でもPEに帰属しないものについては申告対象から外れ(源泉徴収のみで日本の課税が完結)、一方、日本支店が第三国に投資して得た所得など「第三国源泉所得」については逆に日本で申告が必要となります。

世界的には、基本的に帰属主義の考え方を採用している国が多く、大部分の租税条約やOECDモデルも帰属主義の考え方によっています。
日本の国内法においても、国際課税原則について平成26年の税制改正で、それまで採用されていた総合主義から帰属主義に移行されており、現在は帰属主義が採用されております。
使用地主義と債務者主義
国内法における課税関係と租税条約における課税関係を検討する際に、使用地主義・債務者主義の考え方が必要になります。

国内源泉所得として取り扱われる工業所有権等の使用料の源泉地を判断する場合、国内法では、工業所有権がどこで使用されたか、使用地により判断する使用地主義をとっております。一方、租税条約では工業所有権の使用地に関係なく、誰が使用料を支払うのか債務者の居住地国により源泉地を判断する債務者主義をとっております。従って、国内法が使用地主義であるのに対して、日本が締結している租税条約の多くは債務者主義をとっていますので、両者に差異が生じることになります。

例えばある内国法人が、外国法人が所有している工業所有権を海外で使用し、当該使用料を支払う場合、国内法に基づくと使用地主義により日本で課税されませんが、債務者主義を採用している租税条約を締結している相手国の居住者の場合、債務者主義により日本で課税が生じることになります。

このように国内法の規定が租税条約の規定より有利な場合は、国内法の適用を選択することができる(プリザーベーション・クローズ)という原則がありますが、国内法で規定している「所得源泉地置き換え規定」に基づき、国内法に基づく国内源泉所得が、租税条約で規定されている国内源泉所得に置き換えられますので、結果として租税条約に基づく課税関係が適用されることになります。
非居住者及び外国法人に対する課税
日本の所得税法及び法人税法では、非居住者及び外国法人に対する課税については、所得の発生源泉地が国内にあるもの、いわゆる国内源泉所得に限ることとしています。
国内源泉所得かどうかを判断するにあたり、恒久的施設の有無が重要になります。
支店等の恒久的施設があり、かつその所得が恒久的施設に帰属するのであれば、国内源泉所得に該当することになります。なお、恒久的施設については、別のコラムで取り上げます。
例えば、国内源泉所得に該当する事業所得の場合、源泉徴収は不要ですが、法人税の申告が必要になります。一方、国内源泉所得に該当する事業所得以外の所得については、所得の種類に応じて源泉徴収のみで課税関係が完結するもの、あるいは源泉徴収かつ総合課税になるものなど取扱いが様々です。
外国税額控除の概要
日本の居住者である個人や内国法人は、国内で得た所得のみならず、外国で得た所得にも所得税又は法人税が課されます。
国内で生じた所得については日本でのみ課税されることになりますが、外国で得た所得については外国でも課税される可能性があり、この場合には同一の所得に対して日本及び外国で課税されるという二重課税の状態となります。
この二重課税を排除するための仕組みが外国税額控除となります。
外国税額控除の仕組みによって、外国で納付した所得税又は法人税について、日本での申告時に税額控除をすることができます。

居住者又は内国法人に係る外国税額控除は、原則として外国所得税を納付することとなる日の属する年分又は事業年度において控除します。

また、外国税額控除には控除限度額があり、一定の算式により計算した金額に達するまでの外国税額を控除することができます。
外国税額控除を適用する事業年度の外国税額が控除限度額を超える場合には、その超える部分の金額は3年間繰越すことができ、来期以降に税額控除をすることができます。
一方で、控除限度額が外国税額控除を適用する事業年度の外国税額を超える場合には、その超える部分の控除限度額を3年間繰越すことができ、来期以降の控除限度額に加えることができます。
過少資本税制の概要
会社が資金を調達する場合、一般的に「増資」か「借入れ」の二つの方法がありますが、借入れの場合、その支払利息は、法人税の計算では経費として損金に算入することが可能です。過少資本税制(国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例)とは、海外の関連企業から過大な借入れをし、多大な支払利息を計上することにより租税回避するのを防止するため、出資と貸付けの比率が一定割合(原則として、外国親会社等の資本持分の3倍)を超える部分の支払利子に損金算入を認めないこととする制度です。
過大支払利子税制の概要
借入金に対する支払利息は法人税法上、損金の額に算入されます。この場合、もし企業が関連者等から借入を必要以上に行い、支払利息を過大に計上すれば税負担を軽減することができます。
このような租税回避行為を防止するために、一定の算式により計算した金額を超える部分の支払利子を損金不算入とする制度が、過大支払利子税制です。

この租税回避行為はBEPSプロジェクトにおいても問題視されており、従来の過大支払利子税制とBEPSプロジェクトの報告書の勧告内容に差異があるため、平成31年度の税制改正により、この報告書の勧告内容に沿った形での改正がなされています。

なお、過小資本税制と過大支払利子税制の双方が適用される場合には、損金算入額のうち、いずれか大きい金額に係る税制が適用されることとなります。
移転価格税制の概要
昨今、多国籍企業による国境を越えた過度な税負担の軽減を防止する目的からOECD主導のBEPS防止措置実施条約の締結が行われ、移転価格の問題がますます重要になってきています。

国外の関連会社との間の取引価格を調整することにより、日本の税金を少なくすることが可能になることから、国税当局では、租税回避を防止する観点から国外関連取引金額が適正に決定されているかチェックしています。税務上は、国外関連取引が税法で規定されている「独立企業間価格の算定方法」に基づいているかどうかが問題になります。

日本で移転価格税制により追徴課税を受けた場合、相手国で自動的に税金が減額されることはありませんので、その場合は相手国との相互協議により相手国で減額更正してもらうことになります。相手国との相互協議で合意できなかった場合や、そもそも相手国との間で租税条約が締結されていない場合は、二重課税を受け入れざるを得ないときもあります。

移転価格の税務調査は複数年に及ぶことも多く、解決に時間がかかることから、企業側で事前にどのように独立企業間価格を算定したかなどの文書を作成しておく必要があります。
移転価格税制については、別途「移転価格税制のコラム」で項目別にご紹介しておりますので、そちらをご参照ください。
海外取引に絡む消費税
取引が消費税法上、国内取引にあたるかどうかは、その取引が消費税の課税の対象となるか(「消費税法」をあてはめて考えなければならない対象になるか)の基準となりますので、大変重要です。以下は実務でよく出てくる項目です。

●資産の「譲渡」又は「貸付け」の場合
1.原則
その譲渡又は貸付けが行われる時においてその資産が所在していた場所が国内であれば、国内取引

2.特許権、実用新案権等の譲渡、又は貸付け
その権利の登録をした機関の所在地が国内であれば国内取引
ただし、同じ権利について、日本及び外国の双方で登録をしている場合、その権利の譲渡又は貸付を行う者の所在地が国内であれば国内取引

3.著作権、ノウハウ等
その権利の譲渡又は貸付けを行う者の所在地が国内であれば国内取引

4.営業権
その権利に係る事業を行う者の所在地が国内であれば国内取引

5.有価証券
その有価証券が所在していた場所が国内であれば国内取引

6.所在場所の判定が困難なもの
その譲渡又は貸付を行う者の、譲渡又は貸付けに係る事務所等の所在地が国内であった場合、国内取引

●「役務の提供」の場合
1.原則
その役務の提供を行った場所が日本国内なら、国内取引

2.国際運輸、通信、郵便の場合
その運輸・通信・郵便の発送地(発信地、差出地)又は到着地(受信地、配達地)が日本国内であれば、国内取引

3.情報の提供の場合
その情報の提供を行う者の、情報提供にかかる事務所等の所在地が国内であれば、国内取引

4.国内及び国外にわたって行う役務の提供で、提供場所が明らかでない場合
その役務提供を行う者の、役務提供にかかる事務所等の所在地が日本国内であれば、国内取引
輸入取引と消費税
外国貨物を輸入する際には、原則として輸入消費税が課されます。
貨物を海外から輸入する際、積卸しや検査などのために一旦「保税地域」というところに保管されますが、その保税地域から外国貨物を引き取る際に、その引き取る者が納税義務者となります。(免税事業者や給与所得者などの個人でも納税義務者となります)
輸入取引に係る消費税の課税標準ですが、「関税課税価格いわゆるCIF価格に、消費税以外の個別消費税の額及び関税の額に相当する金額を加算した合計額」となります。
輸入品を保税地域から引き取ろうとする者は、原則として、品名、数量、金額等と消費税額などを記載した申告書を保税地域を所轄する税関長に提出し、引き取るときまでに消費税を納付しなければなりません。

税関に提出する申告書に記載する外国貨物の金額により輸入消費税の額も決まってきますが、例えば移転価格税制に係る価格調整金が後日本社よりチャージされる場合は、その価格調整金も本体価格に含める必要がありますので、関税及び輸入消費税の修正申告書を税関に提出する必要があります。価格調整金のチャージにより法人税は減少しますが、関税及び輸入消費税は増加しますので、両者はトレードオフの関係にあると言えます。
非居住者が国内で課税資産の譲渡等を行った場合の消費税の取扱い
非居住者や外国法人であっても国内において課税資産の譲渡等を行い、かつその課税期間の基準期間(前々年又は前々事業年度)における課税売上高が1,000万円を超える場合は消費税の納税義務者となります。
非居住者が日本で申告を行う必要がある場合として、例えば非居住者が管理している日本国内の倉庫から日本国内の顧客へ納品する場合の資産の譲渡(資産の譲渡地が日本)や非居住者が所有している日本国内の機械設備について日本で修理・点検を行う場合の役務の提供(役務の提供地が日本)等が該当します。

なお、非居住者が日本で申告を行うには、国内に住所又は居所を有する納税管理人を定める必要があります。納税管理人は、「消費税納税管理人届出書」を納税地の所轄税務署長へ提出し、非居住者に代わって消費税の申告納税を行うことになります。

また、令和5年10月1日以後、非居住者であっても消費税の申告を行う必要がある課税事業者は、適格請求書発行事業者の登録もあわせて対応する必要があります。
国外企業のために立替払いした費用と仕入税額控除
国外の企業からの依頼に基づき、日本の企業が日本で費用を立替払いし、依頼主へ請求することがあります。
この際、最終的に国外企業の費用となるため、当該費用は、依頼を受けた日本の企業側では消費税を認識せず国外企業には消費税込の金額を請求することが一般的です。
一方、当該費用を負担する国外企業は、もしその国外企業が課税事業者である場合には、その課税仕入れに係る消費税を認識することができます。

また、令和5年10月1日に開始するインボイス制度の基では、立替払いを行う日本企業が、立替払いを受ける国外企業に、適格請求書と同等の条件を満たした精算書等を交付することで、立替払いを受けた国外企業の仕入税額控除が可能となりますので、ご留意ください。
輸入消費税と輸入申告名義人
輸入消費税の仕入税額控除は、原則として、輸入貨物を引き取った者が輸入時に支払った消費税につき仕入税額控除を行います。仕入税額控除の適用を受けるためには、輸入許可通知書の保存が必要となります。従って輸入申告者が輸入消費税を負担することになりますので、両者は一致するのが一般的です。
一方、実務上、輸入許可通知書引取者が単なる名義人であって、輸入消費税の負担者と異なる場合があります。この場合の仕入税額控除の適用の可否ついてご紹介させていただきます。
化粧品販売をしているA社は、化粧品の輸入取引を行いました。化粧品を輸入するには、化粧品製造販売許可が必要となりますが、A社は許可を受けていない為、許可を受けている国内事業者B社を通じて輸入を行いました。その為、輸入許可通知書における輸入者の名義はB社となっていますが、輸入消費税及び関税はA社が負担しました。
この場合、A社が実質的に負担した輸入消費税について、仕入税額控除の適用は出来ません。一方、A社が輸入者となる輸入申告で、単にその手続きをB社に代行させる場合には、B社ではなくA社が、その輸入消費税を仕入税額控除の対象とすることとなりますが、その為には、A社が輸入申告の名義人となり、輸入許可を受ける必要があります。
輸出免税と輸出申告名義人
事業者が輸出取引を行った場合において、輸出免税の適用を受けるためには、輸出免税取引に該当する旨の証明が必要になります。例えば、一般貨物(20万円超の郵便物を含む)を輸出する場合、いわゆる「輸出許可書」の保存が7年間義務付けられています。
輸出許可書には、資産の譲渡等を行った①事業者の氏名及び住所、②年月日、③資産の内容、④対価の額、⑤相手方の氏名及び住所などが記載されています。
輸出者が税関長に輸出申告をし、許可を受けることにより輸出免税が適用されるため、輸出許可書の名称が実際の輸出販売者と一致しているという事実をもって免税が認められることになります。
一方、輸出業務を商社等に委託する場合で、実際の輸出者と輸出申告名義人(商社)が異なる場合は、以下の手続きをもって、実際の輸出者が輸出免税の適用を受けることができます。
1. 実際の輸出者
実際の輸出者は輸出申告書等の原本を保存するとともに、名義貸しに係る事業者(商社)に対して輸出免税制度の適用がない旨を連絡するための「消費税輸出免税不適用連絡一覧表」などの資料を交付します。
2. 輸出名義人
名義貸しに係る事業者(商社)は、確定申告書の提出時に所轄税務署に対して、実際の輸出者から交付を受けた上記1の書類の写しを提出します。(ただし、その課税期間中に商社側で輸出免税取引が全くない場合には、その写しの提出を省略することができます。)
電気通信利用役務の提供(リバースチャージ)
電子書籍・音楽・広告などのインターネット等を介して行われる役務の提供を「電子通信利用役務の提供」といいます。
この電気通信利用役務の提供については、消費税法上の国内取引の判定は、「役務の提供を受ける者の住所等」が国内にあるかどうかによります。
よって、国内の事業者または消費者に対して行われるものについては、その役務の提供が国内、国外のどちらから行われたかに関係なく、国内取引として消費税が課されることとなります。

また、電気通信利用役務の提供のうち国外事業者が行うものを「事業者向け電気通信利用役務の提供」とそれ以外のものとに区分し、それぞれの場合によって消費税の申告方法が異なります。

事業者向け電気通信利用役務の提供の申告方法については、当該役務の提供を行った事業者が行うのではなく、当該役務の提供を受けた国内事業者が申告を行うこととなります。
この申告・納税方式を「リバースチャージ方式」といいます。

したがって、当該役務の提供を受けた事業者は、その役務の提供について仕入税額控除を行うとともに、特定課税仕入れとして申告・納付をすることとなります。

ただし、事業者向け電気通信利用役務の提供を受けた国内事業者の課税売上割合が95%以上、または簡易課税を選択している場合には、当分の間、その特定課税仕入れはなかったものとみなされ、申告する必要がなくなります。
電気通信利用役務の提供(登録国外事業者制度)
国境を超えて(クロスボーダーで)電子書籍・ソフトウェア・広告の配信等を電気通信回線を介して行う「電気通信利用役務の提供」について、消費税の内外判定が“役務提供者の役務の提供に係る事務所等の所在地”から“役務の提供を受ける者(受益者)の住所等”に改正されています。
この改正に伴い、国外事業者が、クロスボーダーで日本国内に向けた電気通信利用役務の提供を行った場合、日本国内における納税義務が発生します。
国外事業者が日本国内の消費者向けにクロスボーダーで電子書籍やソフトウェアの販売を行った場合、国内における課税売上高が1,000万円を超えると、国外事業者も課税事業者として国内で申告納税を行う義務が発生します。その場合、国外事業者は国税庁へ登録申請することにより申告納税することになります。登録国外事業者は、国税庁のHPで公表されます。役務提供を受けた側としては、登録国外事業者へ支払った消費税は税額控除の適用を受けることができますが、登録されていない国外事業者へ支払った消費税は税額控除をとることができません。
なお、事業者向け電気通信利用役務の提供の場合は、前頁の『電気通信利用役務の提供(リバースチャージ方式)』をご参照ください。
進出形態(Cost-plus)
従来、国外関連者(本社)が日本の顧客との間で直接販売活動を行っている場合に、現地子会社がいわゆる補助的活動を行っているため、Cost-plusのストラクチャーをとっている会社が多く見受けられます。子会社の補助的活動として、主に本社と顧客との間の連絡業務が挙げられますが、連絡業務以外にも日本における市場調査、販売促進活動、あるいは本社が販売した商品に不具合などがあった場合の軽微な修理などのアフターサービスなども行っている子会社も少なくありません。

従来は販売に直接結びつかない活動であれば、これらの活動も補助的活動の一環として認められていましたが、昨今のBEPSに基づき、グループ内役務提供について、詳細な事務運営指針が出されました。簡単に言うと、子会社が提供している役務提供が、低付加価値かどうかでCost-plusが使えるかどうか判断されることになります。単なる連絡業務などで低付加価値の活動であれば、簡便法として原価(Cost)に5%のマークアップが認められますが、研究開発、原材料の購入、物流、マーケティングなど企業グループ全体としてみた場合に低付加価値と言えない活動を行っている場合は、その活動を第三者として引き受けた場合の利益率をとるべきとされております。従って、サービス会社としてのコンパラブルをとってTransfer Priceを決める必要があります。
CommissionaireとPEの関係
コミッショネア取引(Commissionaire)とは、販売代理取引の際、代理人が、代理人の名前で販売契約を締結し、委託者の商品を販売する取引です。
通常の販売代理取引は、例えば代理人B社(委託者(外国法人である)A社の100%子会社)はA社の名前で販売契約を締結し、B社は代理手数料をもらいます。
これに対して、Commissionaireは、委託者A社商品の所有権はA社のまま、代理人B社が自己の名義でA社商品の販売契約を締結する点が異なります。取引の相手方に対する権利義務の主体はもちろん販売契約主体のB社ですが、A社商品の所有権はA社にありますので、その取引による商品売買利益はA社に帰属します。B社の収入は、最終的にA社から受け取る手数料のみとなります。
コミッショネア取引における代理人B社は、従来代理人PEとは見なされませんでした。その為、PEリスクを回避しながら、A社に利益を移転することができました。
しかしながら、平成31年以降から国内法の代理人PEの定義が見直されることとなりました。
改正前は、代理人PEを「外国企業のために契約を締結する」と規定していましたが、ここに「外国企業の名義で契約を締結する」のか否かの明文規定がありませんでした。改正後は、取引の名義の如何に関わらず、外国企業の資産の所有権の移転に関する契約を締結する者は、代理人PEとして認定されることになりました。また、代理人業務を通常業務として行う者のうち、専ら又は主として関連企業に代わって行動する者は、代理人PEとされない独立代理人からも除外されるようになりました。このため、上記の代理人B社は代理人PEとして認定され、コミッショネア取引の税務リスクが非常に高くなっております。

上記の説明は日本の法人税法の規定に基づいております。租税条約やMLIによって取り扱いが異なる場合もありますので、ご留意下さい。
在庫保有代理人とPEの関係
従来、非居住者や外国法人のために在庫を保管、展示又は引渡しのために保有している活動のみを行う場所又は者は、準備的・補助的な活動として、恒久的施設から除外されていました。

しかし、2018年度の税制改正により、「準備的・補助的な活動」の見直しが行われたことにより、在庫保有、引渡しが企業全体としての活動の本質的かつ重要な部分を形成しているかどうかで恒久的施設に該当するかどうかの判断が必要になっています。

例えば、外国法人の親会社と日本の子会社が、グループ全体で統合された在庫管理システム(ERP)を使用しており、日本の子会社は親会社の在庫を保有、引渡しのみを行っている場合、仮に親会社が日本の顧客と直接販売契約を結んでいたとしても、日本の子会社の活動がグループ全体としての本質的かつ重要な役割を担っていると考えられるため、恒久的施設として取り扱われることになります。