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簡素化・合理化アプローチ(利益B)の最新動向

従前から簡素化・合理化アプローチ(利益B)の紹介をしてきておりますが、OECDの先導により今後は基礎的販売活動を行う企業に対して課税執行が効率化される方向に動くことになります。2024年10月にはOECDが利益Bの導入有無に関する調査を行うことになっておりますが、利益Bの制度は導入国のみが関係する訳ではなく、非導入国においても影響を及ぼすものと予想されます。現に米国政府を始め先進諸国では標準的な販売取引については利益率を安定させることで効率的に処理し、より特殊性が高い案件に対して注力したい意向があります。

この流れを踏まえると、多国籍企業は基本的な機能を有する海外子会社の利益率をコントロールすることが求められます。換言するならば、海外子会社において赤字を計上することは許容されず、利益率をモニタリングした結果利益率が適正でない場合は、価格調整金を入れる体制を整えておく必要があると言えます。価格調整金を入れる場合、契約書の作成や関税対策なども必要になりますので、これらも含めた体制づくりが必要不可欠です。


従前のニュースで何回か取り上げていますが、簡素化・合理化アプローチ(利益B)は、基礎的販売・マーケティング活動など限られた活動を行っている場合に適用することができます。当該利益Bに関して2024年6月に2つの追加ガイダンスが公表されました。

第1の追加ガイダンスとして、営業費用クロスチェックの仕組みにおける適格国の定義、及びデータ入手可能性メカニズムの仕組みにおける適格国の定義がされました。
これは売上高営業資産比率、売上高販管費率及び産業グループを組み合わせて定められた15のマトリックスに応じた売上高営業利益率をそのまま適用できるのか、それとも追加の調整が必要かを検証するための補助的な方法であり、適格国に該当すればこの営業費用クロスチェックを受けることができます。

また、第2の追加ガイダンスとして政治的コミットメント対象国の定義がされました。世界銀行グループの分類に基づく低・中所得に該当するBEPS包括的枠組み国地域(EU・OECD・G20メンバー国地域を除く)、又はBEPS包括的枠組みには参加していないが、上記基準を満たす、あるいは利益Bの適用する意向を表明した低・中所得の国地域を指します。

OECDは2024年10月に各国地域が簡素化・合理化アプローチ(利益B)を導入するかどうか調査する見通しです。簡素化・合理化アプローチの適用結果が相手国地域に影響を及ぼさない場合の二重課税の問題、価格調整金の問題など未決定要素が多い状況であることから、今後の動向を注視する必要があります。