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リース取引の新たな会計ルール

2027年度から国際水準に合わせたリース会計基準が日本でも義務づけられることとなりました。建物や設備を借りて使うリース取引について、中途解約できず実質的に購入に近い「ファイナンスリース」は借り手の資産・負債に計上する一方、それ以外の「オペレーティングリース」は資産・負債に計上されていませんでした。
今回の改正で、リース契約や賃貸借契約以外でも実質的にリース取引とみなされれば資産・負債の計上対象となるため、企業によっては自己資本比率や総資産利益率が大幅に下がる可能性があります。
一定の12月決算の企業の場合、2028年12月期から強制適用となりますが、2026年12月期からの早期適用も可能です。

関係会社間金銭貸借取引(金利)に対する移転価格税制の適用

移転価格税制における金融取引の取扱いについては、2022年6月に移転価格事務運営要領の改正がありましたが、昨今の世界的な金利上昇により、移転価格リスクが一層大きくなっています。
改正前は、関係会社間のローンの金利水準を設定するにあたり、銀行などの金利水準を照会して金利設定するケースもあり、税務調査でもそれほど問題視されませんでしたが、改正後は現実に行われている取引に依拠しない指標は、参照すべき市場金利には該当しないこととされています。
金利の設定手順は以下のように明記されています。
① 内部比較対象取引
子会社に銀行などからの借入れがある場合、その外部借入れの金利を参照します。ただし、通貨や貸借期間等が国外関連取引と同様であることが必要となります。
② 外部比較対象取引
内部比較対象取引が見つからない場合、公開データベース等を通じて外部比較対象取引を探す必要があります。

東京地裁 移転価格税制を巡り納税者が勝訴

東京地裁はこのほど、移転価格税制の適用を巡る事件について、国が行った法人税の更正処分等(令和2年判決)を取り消しました。これは、取引単位営業利益法(TNMM)に関する初の司法判断となります。
独立企業間価格の算定に当たって国が採用した算定方法が「TNMMに準ずる方法と同等の方法」であるとする国の主張が認められなかったのですが、東京地裁はこの「TNMMに準ずる方法と同等の方法」の定義を、「国外関連者と比較対象法人の差異が、売上高営業利益率の相違に影響を与えない(途中略)であれば、比較対象法人の売上高営業利益率を基に、国外関連取引の独立企業間価格を算定することができる」としています。
本件では、国外関連者と比較対象法人の「市場の状況」に差異があり、売上高営業利益率の相違に重要な影響を与えるものであるため、国外関連者と比較対象法人の間に比較可能性があるということは出来ない、と判断された点がポイントとなります。
TNMMが争点となり裁判所が判断を示したのは本件が初とのことです。なお敗訴した国は東京高裁に控訴していますので、今後の動向も注視する必要があります。

簡素化・合理化アプローチ(利益B)の最新動向

従前のニュースで何回か取り上げていますが、簡素化・合理化アプローチ(利益B)は、基礎的販売・マーケティング活動など限られた活動を行っている場合に適用することができます。当該利益Bに関して2024年6月に2つの追加ガイダンスが公表されました。

第1の追加ガイダンスとして、営業費用クロスチェックの仕組みにおける適格国の定義、及びデータ入手可能性メカニズムの仕組みにおける適格国の定義がされました。
これは売上高営業資産比率、売上高販管費率及び産業グループを組み合わせて定められた15のマトリックスに応じた売上高営業利益率をそのまま適用できるのか、それとも追加の調整が必要かを検証するための補助的な方法であり、適格国に該当すればこの営業費用クロスチェックを受けることができます。

また、第2の追加ガイダンスとして政治的コミットメント対象国の定義がされました。世界銀行グループの分類に基づく低・中所得に該当するBEPS包括的枠組み国地域(EU・OECD・G20メンバー国地域を除く)、又はBEPS包括的枠組みには参加していないが、上記基準を満たす、あるいは利益Bの適用する意向を表明した低・中所得の国地域を指します。

OECDは2024年10月に各国地域が簡素化・合理化アプローチ(利益B)を導入するかどうか調査する見通しです。簡素化・合理化アプローチの適用結果が相手国地域に影響を及ぼさない場合の二重課税の問題、価格調整金の問題など未決定要素が多い状況であることから、今後の動向を注視する必要があります。

国外事業者に係る免税事業者の判定の厳格化②

外国法人が国内において事業を開始した場合の納税義務の免除の見直し

消費税法上、消費税の納税義務の判定は基準期間における課税売上高をもとに判定するため、新たに設立された法人については基準期間が存在せず、設立1期目及び2期目は原則として免税事業者となります。(特定期間における課税売上高が1000万円を超える場合を除く)

今般の改正により、基準期間がある外国法人でも基準期間の末日の翌日以後に国内において課税資産の譲渡などに係る事業を開始した場合には、その事業年度は基準期間がないものとしてみなされることとなります。
免税か課税かの判断として、その事業年度の開始の日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である場合、もしくは資本金の額又は出資の金額が1,000万円未満であり特定新規設立法人の要件を満たす場合は、課税事業者となります。

また「特定新規設立法人の納税義務の免除の特例」における判定対象者に係る金額基準の見直しも行われました。「判定対象者」の「基準期間相当期間」における売上高において、売上金額、収入金額その他の収益の額の合計額が、国外におけるものを含め50億を超える場合は、課税事業者と判断されます。

これらの改正は令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

国外事業者に係る免税事業者の判定の厳格化①

国外事業者における特定期間の課税売上による納税義務の免除の特例が見直されます。

特定期間における1,000万円判定は、課税売上高に代えて、給与支払額の合計額により行うことができるとされていますが、令和6年10月1日以後に開始する課税期間から国外事業者につき、特定期間における1,000万円判定を給与支払額の合計額により、行うことができないとされました。

従って、国外事業者において、特定期間における課税売上が1,000万円を超える場合、給与支払額の合計にかかわらず納税義務は免除されないことになります。

令和6年度税制改正における外形標準課税の見直し

令和6年度税制改正において、令和8年4月1日以後開始事業年度から、払込資本の額(資本金と資本剰余金の合計額)が50億円超の親法人の100%子法人等は、資本金が1億円以下でも、払込資本の額が2億円超であれば、新たに外形標準課税の対象とされることとなりました。
この規定は意図的に払込資本の額を2億円以下とすることにより、外形標準課税の対象外とすることを規制するための措置も設けられています。
適用開始時期は約2年後ですが、令和6年3月30日以後に100%子法人等が親会社に対して“一定の剰余金の配当又は出資の払戻し”を行った場合、その配当により「減少した払込資本の額」を100%子法人等の払込資本の額に加算して2億円超か否かを判定します。

IFRS 損益計算書の開示ルールの統一

国際会計基準審議会(IASB)は、2027年度に向けた損益計算書の開示ルールを示したIFRS第18号を公表しました。
これまでIFRSは営業利益の定義や開示方法は定められておらず、企業によりばらばらで投資家からは企業比較が困難という意見がありました。
IFRS第18号では、損益計算書の構造が見直され、新たに「営業」「投資」「財務」の3区分が設けられることになりました。3区分への見直しは2027年度から企業に強制適用されますが、早期適用も可能となります。
IFRS第18号で最も大きく変わるのが、「投資区分」における持分法適用会社(関連会社)の利益を自社の持ち分比率に応じて収益を認識する「持分法投資損益」についてです。
これまでは営業利益に含めるか否かが企業によって分かれていましたが、新ルールでは営業利益に含めないことが決定されました。

国税庁 令和6年度改正に係る法人税基本通達等を公表

国税庁は6/24、令和6年度改正に係る法人税基本通達等を公表しました。
令和6年度改正のうち大きなものとして、賃上げ促進税制についての大幅な改正(大企業・中堅企業・中小企業向けの3つの制度に改組)がありますが、このうち中小企業向けには、同税制で控除しきれない金額について5年間の繰越が認められる「繰越税額控除制度」が創設されています。
今回の改正通達では、①繰越税額控除限度超過額(上記の控除しきれない金額)が生じた事業年度の終了時に法人が中小企業者に該当していれば、その後、増資や従業員数の増加により中小企業者に該当しなくなっても、過去に生じた繰越税額控除限度超過額の繰越控除が認められる、②繰越税額控除限度超過額を有している法人が被合併法人等となる合併等を行った場合、その合併等が適格合併等に該当する場合でも、その超過額を合併法人に引き継ぐことは認められない、などが改正通達で定められています。
また賃上げ税制以外にも、交際費(飲食費)の金額基準の見直しの改正に伴う細かい規定(複数の法人が共同して接待等を行った場合の取り扱いなど)が基本通達で定められています。

簡素化・合理化アプローチによる利益率の決定方法

以前から何回かに分けて紹介してきているデジタル課税(利益B:簡素化・合理化アプローチ)は、2025年1月1日以降に開始する事業年度から開始されます。簡素化・合理化アプローチの導入国はOECDのウェブサイトで公表され、導入国の場合、当該アプローチが納税者の選択適用なのか、あるいは強制適用なのかを決めることになります。

簡素化・合理化アプローチが適用できる取引は、LRDなどの非関連者への卸売販売や販売代理店、又はコミッショネア取引に限られます。即ち製造や研究開発を行っている場合は、簡素化・合理化アプローチは適用できません。

簡素化・合理化アプローチの対象取引については、取引単位営業利益法(TNMM)に基づき利益水準を決定することになりますが、売上高営業資産比率、売上高販管費比率及び産業グループを組み合わせて15のマトリックスに応じて売上高営業利益率が決められています。検証対象会社の売上高営業利益率が、当該マトリックスで定められている率±0.5%以内であれば調整不要ですが、外れた場合は中央値まで調整することになります。

なお、簡素化・合理化アプローチを採用する場合は、ローカルファイルに適用可能性や計算根拠を示す必要があります。