ブログ

インボイス制度 派遣社員等へ支払う出張旅費

消費税のインボイス制度では、従業員に支給する出張旅費等について、一定の条件を満たせば「出張旅費等特例」により帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。派遣社員や出向社員もこの「従業員等」に含まれるため、派遣先企業が自社の旅費規程に基づき旅費を支給している場合には、原則として特例の対象となります。
しかし、旅費の支払先によっては特例の適用ができないケースもあります。具体的には、出張旅費を派遣元企業に支払う場合は、派遣元から受け取ったインボイスの保存が必要となり、特例の適用はできません。
一方、出張旅費を派遣元企業を通じて派遣社員へ支払う場合は、派遣元が旅費を預かり、派遣社員本人に支払うことになりますので、帳簿の保存のみで特例が適用されます。
このように、出張旅費の処理においては「誰に支払うか」によって取り扱いが異なるので、契約内容と支払方法をしっかり確認することが重要です。

トランプ関税が日本企業の移転価格に与える影響

弊社のクライアントの中には海外親会社のために日本で商品を調達して、海外親会社へ販売する取引を行っている会社があります。このような会社は基本的に商品の国内調達、関係会社への輸出取引が中心となります。
昨今のトランプ大統領による高関税がUS側の輸入取引にどのような影響を及ぼすか考えてみます。日本子会社とUS親会社間の取引金額を移転価格税制に基づき独立企業間価格に基づいて行っていたとします。トランプ関税によりUS側で輸入時に高関税が課された場合、US法人の利益率を圧迫することになります。関税を負担した結果、US法人の利益率が適正レンジを下回ってしまうと、US側での移転価格課税リスクが高まることになります。

この事態を回避するために、日本側で価格調整金としてUS側の関税相当額を負担するとどうなるでしょうか。確かにUS法人の利益率は回復し、適正レンジ内に収まるかもしれませんが、日本側で合理的な理由なしにUS法人の関税相当額を負担した場合、国外関連者に対する寄付金として損金不算入の税務リスクが高まります。また、日本側の利益率が低くなりますので、移転価格課税リスクも高まることになります。
このように国際取引が行われる場合、当事者双方の国どうしの税金の取り合いになりますので、一方の国による高関税は移転価格を考えるうえで悩ましい問題です。

国税庁 e-Tax上で税理士が関与先のマイページを参照できるようになったことを公表

国税庁は5月26日、税理士や税理士法人が関与先のe-Taxのマイページ情報(税務情報)を参照できるようになったことを公表しました。
e-Taxのマイページでは、関与先の本人(法人)情報や申告の参考となる「各税目に関する情報」などを参照することが出来ますが、e-Tax上で関与先と「委任関係の登録」を行うことで、顧問税理士の変更が生じた場合でも税理士等が関与先を介さずに、適切なタイミングで必要な情報を確認できるようになりました。
あわせて、所得税関係・消費税関係・法人税関係については、表示される情報について過去1年分のみだったものが拡大され、過去5年まで遡って参照可能となりました。
またマイページ中の「顧問税理士のメールアドレス」についてマイページを参照する税理士等が修正・更新することが出来るようにもなり、これにより必要な情報が現在の顧問税理士に共有され、かつ契約解消した旧顧問税理士に旧関与先に関するメールが届くことも無くなりました。
国税庁によると、今後もe-Taxのマイページで表示する機能を拡充するなど機能の充実を目指していくとのことです。

国税庁 グローバル・ミニマム課税に係るR7改正のあらましを公表

国税庁は4月25日、「グローバル・ミニマム課税への対応に関する改正のあらまし(2)」を公表しました。令和7年度税制改正で法制化された軽課税所得ルール(Undertaxed Profits Rule:UTPR)と国内ミニマム課税(Qualified Domestic Minimum Top-up Tax:QDMTT)の各制度の概要等が示されています。
各制度のうち、UTPRは多国籍企業グループの中で、軽課税国に所在する親会社等の税負担が基準税率15%に満たない場合、子会社等の所在地国においてその子会社等に対して課税を行う制度です。
日本では、「国際最低課税残余額に対する法人税」として導入され、年間総収入金額が7億5,000万ユーロ以上の特定多国籍企業グループ内の構成会社である日本法人等が対象となり、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。課税額は、各会計年度の課税標準国際最低課税額に税率90.7%を乗じて計算されます。今後、各制度に係る通達やQ&A等が順次公表される予定です。

「のれん」償却不要の方向へ

政府の規制改革推進会議は、M&A(合併・買収)で発生する「のれん」について、定期償却を不要とする制度変更を提言する方針です。現在、日本基準ではのれんを最大20年で償却する必要がありますが、国際会計基準(IFRS)や米国基準では減損処理のみにとどめています。償却により営業利益が圧迫されるため、特にスタートアップ企業の買収が進みにくいと指摘されていました。経済同友会の調査でも7割超の企業が障害と回答しています。会議では非償却、または償却との選択制を提案し、企業会計基準委員会に検討を要請します。これにより、企業のM&A戦略の柔軟性が増し、スタートアップの成長や投資回収の「出口戦略」としてのM&A活用が期待されます。一方、損失計上のタイミングが不透明になるリスクも指摘されており、制度変更には慎重な議論が求められます。

税務CG、資本金1億円以上の調査課所管法人に拡大へ

国税庁では、資本金40億円以上の「特官所掌法人」を対象として実施してきた税務コーポレートガバナンス(税務CG)について、今後は資本金1億円以上の「一般調査部門所掌法人」にまで対象を拡大する方針が検討されており、現在はその試行的な取組が行われています。
試行段階では評価結果の通知は行われていませんが、企業が取組に積極的に対応することで税務CGが向上し、次回の税務調査までの間隔が長くなるなどの利点が期待されます。一方で、税務CGの状況が不十分な場合には、税務調査の必要性が高まる可能性もあります。
なお、この取組は「調査」ではなく行政指導に該当し、企業の自発的な対応が求められています。

国税庁、「防衛特別法人税」の申告様式に関する情報を公表

国税庁は、令和7年度税制改正により新たに創設された「防衛特別法人税」に関する申告様式について情報を公表しました。
防衛特別法人税額は、「基準法人税額」から基礎控除額である500万円を控除した「課税標準税額」に4%の税率を乗じて算出されます。基礎控除により課税標準税額がゼロとなる法人や、赤字等により基準法人税額自体がゼロとなる法人であっても、原則としてすべての法人に申告義務が課されます。
申告様式については、防衛特別法人税の申告書は法人税申告書と一体で提出する形となります。ただし、防衛特別法人税の別表一は、従来の法人税申告書の別表一とは異なり、「次葉一」として追加されます。そのため、現在の別表一次葉は「次葉二」に変更されます。
この改正により、令和8年4月1日以後に終了する事業年度に係る法人税の確定申告書は、別表一、次葉一、次葉二の計3枚となります。

国税庁 令和5年度分「会社標本調査」の調査結果を公表

国税庁は4月24日、国内の法人企業を対象にその実態を明らかにした令和5年度分の「会社標本調査」の調査結果を公表しました。この調査は内国普通法人のR5.4.1からR6.3.31までに終了した事業年度につきサンプル調査したものです。
全体の法人数は約296万社と11年連続で増加し、このうち利益計上(黒字)法人は過去最大の約115万社で全体の39.0%に拡大しました。

営業収入金額は1,760兆1,788億円(前年度比2.2%増)で3年連続、所得金額は91兆7,696億円(同14.7%増)と4年連続で増え、ともに過去最高でした。
また法人税額は16兆3,976億円(同15.1%増)、外国税額控除は1兆2,047億円(同47.0%増)と増加した一方、所得税額控除はR5.10から完全子会社株式等に係る配当等の源泉徴収が無くなったこともあり、3兆8,819億円(同184%減)と4年ぶりに減少しました。

また交際費等の支出額は4兆1,841億円(同16.8%増)で2年連続、寄付金の支出額は1兆3,702億円(同33.4%増)で4年連続の増加となりました。なお寄付金の支出額のうち1兆1,233億円がその他の寄付金(同42.9%増)となり、これには完全子法人への寄付も含まれています。

外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し

令和7年度税制改正大綱により、外国人旅行者向け消費税免税制度はリファンド方式へ移行することとなりました。輸出物品販売場を経営する事業者(免税店)は一旦課税で販売し、旅行者が90日以内に税関で持ち出し確認を受けることで免税が成立します。免税店は国税庁システムを経由して「税関確認情報」を取得・保存し、課税売上げを免税売上げに振り替えたうえで、消費税相当額を旅行者に返金します。振替処理は免税店が税関確認情報を取得する都度、課税売上げから免税売上げに振り替えるほか、月次等の一定のタイミングで一括して振り替える処理を行っても差し支えないとしています。なお、対象物品の持ち出しが確認できない場合は、課税売上げのまま取り扱うことになります。

所有権移転外リースの分割控除について

新リース会計基準では、借手はすべてのリースを資産・負債として貸借対照表に計上します。一方、非上場の中小企業はこの基準の適用対象外であるため、所有権が移らないリースについては、従来どおり賃貸借処理が認められます。この場合、消費税の仕入税額控除はリース料の支払時ごとに行う「分割控除」が引き続き適用されます。

一方で、所有権が移るファイナンス・リースは、税務上は資産の売買とみなされ、引渡し時に「一括控除」を行うことに変わりはありません。オペレーティング・リースについても、引き続き分割控除が認められます。