第8話:外国法人の源泉徴収の免除証明書_vol.2

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「Rino's Tax Diary」

第8話:外国法人の源泉徴収の免除証明書_vol.2

「承知しました。では最初から説明しますね。」リノは話し始めた。
「そもそもどうしてこのような制度、届出があるかご存知ですか?」
「いや、さっぱりわかりません。面倒なだけですよね。」栗山さんはすぐに答えた。

「では・・・」とリノは一呼吸して、「ある普通の日本の法人が不動産を所有していて、不動産管理会社へ家賃管理をお願いする場合で、管理会社が自分のところの手数料を差し引いた家賃を所有者である日本の法人へ支払う場合を考えてみましょう。不動産を所有している会社は、家賃収入について当然法人税の申告をしますが、管理会社から所有者へ支払う時に源泉所得税はかからないですよね。ところが、所有者が外国法人の日本支店になった途端、国内法に基づいて管理会社から所有者へ支払う家賃には源泉所得税が20.42%かかるとなると、外国法人にすごく不利になりませんか。不利ですよね。不動産所有している外国法人は、家賃収入について当然法人税の申告をしています。日本で同じ商売、テナント収入を得ているにもかかわらず、日本法人(内国法人)だったら源泉なし、外国法人だったら源泉ありという不公平感をなくすための手続きと考えるとわかりやすいかもしれません。」リノは丁寧に説明した。
リノは続ける。「外国法人にとってみたら、家賃収入について日本できちんと申告していることを前提として税務署に認めてもらい、支払時に源泉税を免除してもらう方向で動きたいと思いませんか。」
「確かにそうですね。誰だって源泉を取られたくないですもんね。」栗山さんは同意する。
「この源泉税を免除してもらう制度が、「外国法人に対する源泉徴収の免除証明書」という制度です。この免除証明書の交付を受けるには、シンガポール法人の日本支店が自分で税務署へ申請して取る必要があります。免除証明書を取った後は、その証明書を御社、すなわち不動産管理会社へ交付して、証明書があるから源泉徴収しないでくださいと依頼するためのものになります。」リノは一気に説明した。
「なるほど。理にかなっていると思います。」栗山さんは深くうなずきながら、「もし、シンガポール法人の日本支店が免除証明書を交付してくれなかったらどうなりますか?我々から彼らへ家賃を支払う際に源泉徴収する必要があるってことですよね。」と聞いてきた。
「その通りです。シンガポール法人の日本支店からしたら手取りが減ってしまうことになりますので、今の状況を説明したらすぐにアクションを取ると思いますよ。」リノは言った。
「状況はわかりました。ただ、シンガポール法人の日本支店の担当者は、私の知り合いなのですが、日本語があまり得意でない外国人なので、うまく伝えられるかどうか・・・・。」栗山さんは不安そうな表情を浮かべた。
「なるほど。それでは私の方からその担当者の方へ英語で説明しましょうか。もし、担当者の方の連絡先を教えて頂ければ、こちらで免除申請のお手伝いをしても構いませんよ。」リノは付け加えた。
「本当ですか?助かります。すぐにお知らせしますのでお願いします。」栗山さんは嬉しそうな顔をしてそそくさと携帯を取り出して連絡先を探し始めた。
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発行者:坂下国際税理士法人