第23話:税関調査の影響_vol.1

国際税務の最前線を紹介する
「Rino's Tax Diary」

第23話:税関調査の影響_vol.1

最近、リノは税関調査について相談を受けることが多い。リノの事務所のClientの多くは本社から商品を輸入し、日本国内の顧客向けに販売している企業だが、ほとんどのClientは商品輸入時の通関業務について、フォワーダー(乙仲)へ委託している。そのため、Client側で通関業務の詳細な手続きを把握していることは少ない。物流担当者であれば通関の流れを含めてサプライチェーンをある程度把握しているものの、経理担当者はフォワーダーから上がってきた請求書を確認するにとどまるので、実際の税関調査がどのように行われるかも知らないケースが多い。
「おはようございます。実は来月から税関の事後調査が入る旨の連絡を受けたのですが、初めてのことなのでどうやって対応するべきかわからず、不安なんですよね・・・。」リノがBook review時に通される会議室に入ると、間もなく会議室に入ってきた三枝さんが開口一番に話し出した。
「そうなんですね。。。実は最近うちの複数のお客様のところにも税関調査が入ったところです。これがたまたまなのか、コロナが終息に向かっているから調査が増えているのかわかりませんけど・・・。」リノは答える。
「えっ、そうなんですか。じゃあうちだけじゃないんですね。それなら少し安心です。と言っても何とか対応しなくてはならないので、不安は不安なんですけどね。先生の方で対応して頂くことは可能ですか。」三枝さんが聞いてきた。
「基本的には通関時の書類の確認になりますので、御社の方でご対応頂くのがスムーズかと思いますが、ご要望があれば調査官が質問してきた場合などの対応はしますよ。」リノはすぐに答えた。
「ありがとうございます。何かあればすぐに連絡しますので、その際はよろしくお願いします。因みに税関の調査の結果、何か追加で支払うことがあった場合、どんな感じで処理することになるのですか。」
「税関の調査は、通関時の輸入貨物の課税価格が正しかったかどうかがチェックされます。仮に課税価格が低い場合、正しい課税価格に修正して申告することになりますが、通関手続きは通常フォワーダー経由で行っていますので、修正申告もフォワーダー経由で提出することになります。」リノは続ける。
「もし、課税価格が増加したことに伴い、輸入消費税を追加納付した場合は、税関への修正申告後、消費税の更正の請求書を提出して消費税の還付申請をすることになります。」
「あれ?税関へ支払ってその後、還付申請ってどういうことですか?」三枝さんは不可解な表情をした。
「税関へは正しい課税価格をもとに修正申告、追加納付をする一方、消費税法上は支払った輸入消費税は税額控除の対象となりますので、還付請求することになります。」リノはわかりやすく説明した。
「追加納付した分は、今期の仕入税額控除に含めてしまっていいんじゃないですか。」三枝さんが口をはさむ。
「本当はそのようにできれば簡単なのですが、追加納付が生じた事業年度分として処理する必要がありますので、結果として過年度分の更正の請求という形をとることになります。」リノは申し訳なさそうに言った。
「一回払って取り戻すのであれば、当局側で処理してほしいというのが納税者としての心理かと思いますが、当局の縦割り行政の影響かと思いますが、税関は税関、消費税は消費税となってしまっているようです。」
「なるほど。確かに処理が大変ですね。でも払った輸入消費税は確実に戻してもらわないと困りますしね。」三枝さんは相槌をうちながら自分自身を納得させているようだった。
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発行者:坂下国際税理士法人