第15話:短期滞在者免税_vol.2

国際税務の最前線を紹介する
「Rino's Tax Diary」

第15話:短期滞在者免税_vol.2

「あっ、そうだ。もう一つだけいいですか?」矢崎さんはバタバタと音を立てながら戻ってきた。
「そうそう、今度イギリス人が短期でこっちへ来るって聞いているんですよ。確か今年の9月初めに来て、来年の3月には戻るらしいんですけどね。この場合はどうなるんですか?7か月の勤務だから課税になってしまうんですかね。」
リノが話を聞く準備ができていないにもかかわらず、矢崎さんは一気にしゃべりだした。
「え~っと、そうですね。イギリス人で、7か月の滞在・・・。」リノは確認しながら自分のメモにタイムテーブルを書いた。
「やはり給与は本社負担ですか?」
「いや。今度はちょっと長めの滞在なので、うちが払うことになりそうですね。」
「だとすると、この方は滞在期間が通算して183日を超えてしまうので、日本で課税されてしまいますね。つまり、御社が給与を支払う時に20.42%の源泉税をとることになります。」
「では、私の解釈であっていたんですね。」矢崎さんは嬉しそうだ。
「ええ、その通りです。では、今回のケースとはちょっと関係ないのですが、もし、これがドイツ人だったらどうなると思いますか?」リノはついでに質問してみた。
「そういう質問が来るということは、免税になるんですか?」矢崎さんはなかなか勘が良い。
「さすがですね!そうなんです。日独租税条約だとその年の滞在期間が183日以下であれば免税と規定していますので、通算して183日超だとしても今年4か月、来年3か月でいずれの年も183日以下であれば免税になるんです。日英租税条約だと通算の滞在期間で判定することになるんですけどね。」リノは説明した。
「なるほど~。色々と深いですね。」矢崎さんは感心している。
「そうですね。前回はこうだったから、今回もこれでいこうと言って処理してしまうと、間違えてしまうことがありますね。」リノはそういいながら、出されたお茶に手を伸ばした。
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