第11話:外国法人日本支店が納税管理人を選任する場合

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「Rino's Tax Diary」

第11話:外国法人日本支店が納税管理人を選任する場合

「あの~、実はこの度支店を閉鎖することになりまして、ご相談があるんです。」
今日、リノはアメリカ系のコンサルティング会社にお邪魔している。駿河さんは、そのコンサルティング会社の日本支店を切り盛りしているベテランだ。
「えっ、そうなんですか。それはまた突然ですね。どうして閉鎖になってしまうのですか?」リノは驚いて聞いた。
「実はアジアの統括会社がシンガポールにあるんですけど、今後は日本のビジネスはシンガポールに集約されることになり、事業所自体を残しておいても仕方がないということで閉鎖の決定が出たのです。つい2、3日前の話です。あまりにも急なので、どうしたらよいのかわからずご相談した次第です。」駿河さんは残念そうな顔をして説明してくれた。
「そうなんですか・・・。近頃、外資系企業の動向としてシンガポールや香港のアジア統括会社に日本の管理部の機能を移したり、特定の事業部全体を移して日本での事業をリストラする傾向が見られるようになりましたね。それにしても、事業所の廃止はちょっと残念ですね。」リノはショックを隠しきれない。
「今後の税務手続きの予定はどうなるのですか。」駿河さんが聞いた。
「ちなみに支店の閉鎖日はいつですか?」
「今月末の9月30日になります。」駿河さんはすぐに答えた。
「そうなると、納税管理人を定めないと支店閉鎖日までに申告する必要がありますね。つまり、9月30日に支店閉鎖して9月30日までに申告することになるのですが、実務的に難しいので、通常は納税管理人を選任するのが一般的です。今から納税管理人の選任届を出すと廃止日の翌日から2か月以内の申告になり、11月末が申告期限になりますので、時間ができますよね。」リノは図を書きながら説明した。
「その選任届というのは、いつ出すのですか?」駿河さんが追加で質問した。
「閉鎖日の前に提出する必要がありますので、今からすぐに提出した方がいいですね。こちらで作成しましょうか?」リノは気を利かせて言った。
「ええ、お願いできますか。全く初めてのことなので、どんなものなのか見当もつきませんので。」駿河さんは答えた。
「承知しました。それでは事務所に戻ったらすぐに書類を作成します。準備ができましたら、また連絡させて頂きます。」リノはそう言って自分のメモに”納税管理人選任届作成”と記入した。
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発行者:坂下国際税理士法人