第1話:租税条約届出書とは?

国際税務の最前線を紹介する
「Rino's Tax Diary」

第1話:租税条約届出書とは?

「えっ、租税条約届出書をまだ出していないんですか?今月末に本社へロイヤリティの支払いをしますよね?すぐに出さないと源泉税が20.42%かかってしまいますよ。」思わず声が大きくなった。話している相手はフランス系のIT企業の経理課長の北条さんだ。
「フランスの親会社へロイヤリティを支払うという理解でよろしいでしょうか。」「はい、そのとおりです。」「本社は日本の株式を100%保有しているんですよね?それならば、租税条約届出書を出せば免税になりますので、すぐに租税条約届出書を提出しましょう。特典条項に関する付表と親会社の居住者証明、それにRoyalty Agreementを添付して出せば大丈夫です。とにかく急いで出しましょう!」

桜宮リノ。独立15年目の開業税理士。今日はBook reviewのためにクライアントの事務所に訪問している。毎年、夏の時期は申告作業も一段落し、毎月のBookkeepingやBook reviewといった作業が中心となる。リノのクライアントは外資系企業が多いので、租税条約等の国際税務に関する問題を取り扱うことが多い。

「租税条約届出書ってどこで手に入るんですか?」北条さんは経理についての一通りの知識があるが、最近外資系企業へ転職してきたばかりなので、租税条約関係は慣れていないらしい。
「国税庁のホームページからダウンロードできますよ。ちょっと一緒に見てみましょうか。」そう言いながらリノは自分のPCで国税庁のホームページを開いて北条さんへ見せた。「特典条項に関する付表もダウンロードできますよ。今回はロイヤリティの支払いなので、様式3と様式17(仏)が必要になります。」リノはそう言ってブランクフォームをプリントアウトした。
「すぐにフランスの本社へ連絡して、居住者証明を取るようにお願いしてくれますか?取るのに1か月くらい時間がかかるかも知れないので、急いで取ってもらわないと支払いに間に合わなくなってしまいますよ。あと、これは確認ですが、フランスの親会社は海外で上場していませんよね?」リノは続けた。
「はい。フランス本社はプライベートカンパニーなので上場していません。」
「それならば、特典条項に関する付表と居住者証明の提出は1年ごとに更新する必要がありますね。もし、上場していると3年ごとになるので、多少手数が省けるのですが・・・。あと、もしよろしければ、フランスに居住者証明書をとってもらうためのフォームもダウンロードできますよ。」リノはそう説明しながら、「仏国居住者に係る居住者証明書」も印刷した。
「フランス本社へ居住者証明書をとって送ってくださいとお願いしてすぐに通じればよいのですが、居住者証明書って何?みたいなことを聞かれたら、これをフランスへ送って、この紙に居住者であることをフランス当局に認証してもらうようにお願いすれば通じると思います。あと、租税条約届出書にフランス本社担当者のサインが必要なので、こちらも一緒に送って下さい。」
「はあ。大体わかりました。早速フランスへ連絡してみます。ちょっとやってみて行き詰ったらまた教えて下さい。」北条さんはちょっと自信がなさそうに言った。
「一度出せば概ね全体像がわかりますので、どうということはないのですが、慣れるまではちょっと大変かもしれませんね。でも、わからないことがあればいつでもおっしゃってください。それではそろそろ私は失礼しますね。」そう言いながら、リノは帰り支度を始めた。
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発行者:坂下国際税理士法人