第2話:租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求

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「Rino's Tax Diary」

第2話:租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求

「あのぅ、先日話していた租税条約の件ですが・・・。」北条さんからの突然の電話だった。
「フランスの方で居住者証明書を取るのが時間かかるみたいで、支払日までに間に合わなそうなんです・・・。これってどうしたらいいですか?」
「えっ、そうなんですか~。本当はなんとか間に合わせてほしいんですけどね~。間に合わなければ、仕方がないですけど、支払日に20.42%源泉するしかないですね。」リノは残念そうに言った。
「20.42%もとられちゃうんですか。う~ん、これってすごいロスですね・・・困ったな・・・。」北条さんは一瞬言葉を失ってしまった。
「あ、でも最初は20.42%源泉して国に納めて頂くことになりますが、後付けで書類をそろえれば還付請求することはできますよ。」リノは慌てて付け足した。
「えっ、還付してもらえるんですか?」北条さんは怪訝そうだ。
「ええ。まずは間に合った場合と同様の書類、つまり租税条約届出書と特典条項に関する付表、居住者証明、Royalty Agreementをそろえて頂く必要があります。その他の書類としては、①租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書、②20.42%の源泉税を支払った時の源泉所得税の納付書、③フランスへロイヤリティーを支払った際の海外送金明細書をそろえて頂くことになります。①のブランクフォームは国税庁のホームページからダウンロードできますよ。あと、フランスに還付金を受け取りたい口座も聞く必要がありますね。」リノはかいつまんで説明した。
「後付けで出しても租税条約の適用を受けられるんですね。それならまだ良かった。ただ、そろえる書類が多そうですね。」
「確かにちょっと書類が多くて大変ですね。税務署も還付手続きとなると、色々資料を請求してきますからね。でも、資料さえちゃんとそろえれば、時間はちょっとかかりますが還付してもらえますよ。」リノは元気づけるように言った。
「還付請求をした後、どのくらいで還付してもらえるのですか。本社は届出書さえ出せばすぐに戻してもらえるのかと聞いてくると思います。」
「はっきりしたことは言えませんが、私の経験からすると資料を最初からきちんとそろえて出せば最短で1か月ぐらいで戻ってくる感じでしょうか。」
「わかりました。還付請求するとなると手間がかかりますので、できるだけ租税条約届出書を出してから支払うようにします。とにかくフランスに急ぐようにプッシュします。」北条さんはそう言ってそそくさと電話を切った。
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