第5話:日本支店における申告期限の延長

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「Rino's Tax Diary」

第5話:日本支店における申告期限の延長

午後からリノの事務所にドイツ系IT企業の日本支店の代表者である山崎さんが相談に来ている。この会社はここ1か月の間にリノの事務所に税務会計業務を依頼してくれたクライアントである。日本支店設置後まもない企業で、山崎さんも入社したばかりということもあり、日本支店の税務に関しては全く分からず手探りでやっている。最初なので概要を説明してほしいとのことだ。
「ところで、御社の決算は何月ですか?」リノは話題を変えた。
「12月ですよ。本社の決算期が12月なので、自動的にこちらも12月です。」山崎さんは続ける。
「あっそうそう、本社の方から日本支店の税務スケジュールがどうなっているか確認してくれと言われています。本支店間で経理上合算処理する必要があるからだと思いますが、私も外資系の日本支店の代表者になったばかりなので、どうやって進めていいかよくわからないんですよ。スケジュールを教えて頂けますか?」
「わかりました。因みに本社の決算は12月に帳簿を締めた後、いつ頃決算書が出来上がるのですか?」リノは聞いた。
「そうですね~。本社の方で内部の調整が色々とあるみたいで、本店の決算書が出るのはおそらく4月から5月頃じゃないかと思います。」
「そうなると、決算書が固まるのが事業年度終了後5月ぐらいということになりますので、支店の申告期限を3か月延長しましょう。本来、法人税と地方税の確定申告書は決算日後2か月以内に提出する必要があるのですが、本社の決算が固まらない等の理由がある場合、申告期限の延長申請をすることができるんです。本社の決算が5月に固まるのであれば、それにあわせて支店の申告をすることになりますので、3か月の延長申請をすることになります。」リノはメモにタイムテーブルを書きながら説明した。
「延長することによるペナルティとかは生じるのですか?」山崎さんはぬかりない。
「もし、5月までに何も支払わなかったら、支払利息に相当する利子税がかかります。利子税は税務上も損金に落とせますので、ペナルティと言うわけではありませんが、御社にとってみれば利子税の分だけ余計に支払う必要があります。利子税がかからないようにするには、見込納付と言って、法定申告期限つまり2月末までにあらかじめ税金を見込みで納めておく方法がありますよ。」
「もし、その見込みで納めた金額が、確定の金額と異なってしまったらどうするんですか?まあ、見込みって言うくらいですから、普通は確定額と異なると思うのですが。」
「もちろん、確定額が見込み納付の金額より多ければ差額を支払うことになります。その逆の場合、つまり確定額が見込み納付の金額より少なければちゃんと返してもらえますよ。ですから、どうしても利子税がつくのを避けたいのであれば、見込み納付の時に少し多めに支払っておく会社もあります。」リノは詳細に説明した。
「なるほど。見込み納付か・・・。それはいい方法ですね。おそらくその方法で行くと思います。」山崎さんはそう言いながら、自分の手帳に書き込んだ。
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