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第18話:BEPSプロジェクト_vol.1

国際税務の最前線を紹介する
「Rino's Tax Diary」 
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Rino's Tax Diary 第18話:BEPSプロジェクト_vol.1
リノは朝から電話対応に追われている。毎月月初は外資系企業のBookの締めが立て込んでいる関係で、事務所内はバタバタしていることが多い。特に今月はメールと電話がひっきりなしだ。とっくに正午が過ぎているのにお昼に出られそうもない。リノが先程受けたメールのドラフトを書いていると、また電話が鳴った。

「ビーズインターナショナルの渡辺です。お世話になります。影山さん、今ちょっとだけよろしいですか?」機械部品を輸入販売しているドイツ系企業の渡辺さんからの電話だ。
「あ、はい。こちらこそお世話になっております。大丈夫ですよ。」リノはまたお昼に出るタイミングを逃してしまったと思いながらも電話に出た。
「最近、ちょっと耳にしたんですが、やはりTPの文書化はしておかないとまずいって本当ですか?」渡辺さんは早速切り出した。
「そうなんですよ。今後は益々文書化する流れになるんでしょうね。」リノは続ける。
「もともとは、多国籍企業がクロスボーダー取引を利用して行き過ぎた税金逃れをしている経緯があって、これらの行為に歯止めをかける目的でOECDが主体となってBEPSプロジェクトというものを実施しているんです。」
「ベップス?それって何ですか?」渡辺さんは突拍子もない声を出した。
「BEPSというのは、Base Erosion and Profit Shiftingの略なんですけど、日本語訳すると「税源浸食と利益移転」というらしいのですが・・・、要するに多国籍企業がクロスボーダー取引を利用して税率の低い国に所得を集めてグループ全体からみるとほとんど税金を支払わなくていいような状態にしていることはけしからんので、適正な取引状態に是正して行きましょうという提言ですね。この問題を解決するためにOECDが行動計画というものを発表しているのですが、その中の一つに移転価格(Transfer Price: TP)の文書化をしましょうという規定があるんです。今や税金は国家間の取り合いですから、移転価格はセンシティブな問題ですよね。」リノは説明した。
「へえ~、そうなんですか。なかなか厄介な問題ですね・・・。でも、うちはすでに国外関連者の別表でしたっけ、確定申告書に添付していますよね。それだけじゃダメなんですか?」と渡辺さんは質問してきた。渡辺さんは日本子会社のコントローラーを務めている人だけに国際税務についてなかなか良く理解している人だ。
「渡辺さんがおっしゃっているのは、別表17の4の「国外関連者に関する明細書」ですよね。あの別表は、国外関連者との間の国外関連取引の明細を記載しているだけなので、今話している移転価格の文書は別表とは別に作成する必要がありますね。つまり、どうしてその金額で取引したのか、取引金額の妥当性を証明するための文書を作成する必要があるということです。」リノは詳しく説明した。
「なるほど。概要はわかりました。詳しくは次回来社されるときにお話し頂けますか?私はこれから会議に入らないといけないんです。」渡辺さんはそう言って電話を切った。
やれやれ、これでちょっと一段落できそうだ。リノは他の電話が鳴らないうちにランチを買ってこようと席を立った。
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